迫るブラジル大統領選。トランプより危険な極右差別主義候補が台頭した理由

極右の差別主義者だが「クリーン」な男

 何しろ、ボルソナロは人種差別主義者で、ホモファビア、男性優越主義者。そして、武器の所持を奨励し、独裁政治を容認している。彼の極右政治を恐れて、彼が大統領になることを拒否する人は有権者に多くいる。 「彼はNoだ」という女性が中心になった動きがある。1億4700万人の有権者の中の7730万人の女性がボルソナロに票を入れることに反対する運動だ。彼女たちは自分たちがブラジルの大統領の選出に大きなカギを握っていると誇らしげに語っている。ボルソナロの選出に反対している理由は、彼は差別主義者で女性を蔑視しているからだという。(参照:「El Confidencial」)  そうはいっても、汚職で溢れたブラジルの政界で、20年の政治家としての経歴をもつボルソナロに纏わる汚職はこれまで指摘されたことがない。彼はクリーンな政治家だとされている。それがまた彼を魅了する要因になっている。  特に、富裕層そして中流層の白人社会が彼の支持基盤になっているが、意外なのは若者に多くの支持者がいるということだ。彼に票を入れようとしている6割は34歳未満の若者だという。(参照:「El Diario」)  彼らはルラの社会主義政治のせいで経済は大きく後退し、失業者も増えていると思っている。その結果、都市には犯罪や暴力が横行し、それを取り締まってくれるのが軍人出身で軍隊を称えるボルソナロに治安を任せるのが最適だと考えているのである。

一騎打ちの決選投票だが他に懸念材料も

 メディアの予測では、ボルソナロとハダードの決戦投票になるであろうと見ている。互角の勝負になると推断されているが、ハダードが他の左派系の候補者からの票を集めて優位に立つ可能性ありと予測している。ボルソナロは殆ど一匹狼的存在である。  しかし、カマルゴが指摘しているが、仮にハダードが勝利した場合に、彼が政権を運営することに軍部が黙って受け入れるであろうか?という疑問があるとしている。これまでも、一部の将校はルラが政権に復帰することは絶対にさせないと言っていた。クーデターを起こすまでの力は今の軍部にはないと言われている。しかし、ルラの後を継ぐ同じ労働者党の政権を軍部が素直に受け入れるか疑問もある。(参照:「El Espectador」) <文/白石和幸 photo by Agência Brasil Fotografias via flickr(CC BY 2.0) > しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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