「なんですか?」
事前通告どおりの不動産執行であることを告げると、自分には対応が難しいと言う。
この時点で元マル暴の方より執行人チームに「中には3人いるからそのつもりで」とアナウンスが入る。同時に、ヤクザ屋さんは占有物件を「城」にしてしまうため、随所に様々な仕掛けがある可能性が高く、室内に入ってからも十分に注意するようにとのアドバイスが送られた。
しばらくのらりくらりと応答していたヤクザ屋さんだが、10分ほどすると何らかの準備が整ったのかいきなり扉を開けた。
「どうぞ」
ルール上、執行官が先陣を切るのだが、ピタリとついた元マル暴の方が同時に入ると、手慣れた様子で室内に駆け上がり、監視カメラのモニタリング室を抑えた。
この様子をなにやら警視庁24時シリーズの突入劇を見ているような感覚で眺めていたのだが、彼に
続いて踏み込まなければならないのが自分であること思い出し、慌てて室内に。
かなり古い間取りの室内。複数人での居住が見受けられるが、掃除は行き届き綺麗に保たれている。
しかし、噂通りの仕掛けはあり、注意して歩かなければ足が取られてしまう不自然な床抜けが3箇所ほどありヒヤヒヤさせられた。
2階には幹部の部屋らしきものもあり、映画のような
模造刀や掛け軸が飾られている。
物件調査中もマル暴の方が
“若い衆”をマンマークしており、「残りの奴らはどこだ」と詰め寄ったが、結局この2人は不思議な事に外に出た形跡もなく忽然と姿を消してしまった。
一応我々も押し入れや人の隠れられそうな箇所を探してはみたのだが、見当たらない。
この謎が解明できないと見るや“若い衆”は「どうぞ、ゆっくりしていってください!」と上機嫌になり、自分の趣味まで語りだす始末。“若い衆”といってもヤクザ屋さんにも人材不足と高齢化の波は押し寄せており、見たところは残念ながら40代といった印象。ちなみに、趣味は釣りとクルマいじりにラジコンだそうだ。
「何故ここを占有している」
そんな質問には一向に答える気配のない“若い衆”、我々にも追求する権限はないため、全てのモヤモヤは晴れることなく物件をあとにすることになった。
建物の外周をぐるりと探すも、やはり人が出入りできるようなところはなく、庭には掘り返されたような痕跡もなければ、人がウロチョロした形跡もない。闇カジノで使われていたであろう筐体がいくつか放置されていた程度だ。
なにより不可解なのは、物件を調査しても彼らが当該物件を占有する価値が全く見出だせないということ。
唯一残された可能性としては軒下に何かがあるのではという点だが、我々にそこまで踏み込む手立ても無ければ理由もない――。
過去にはほとんどの事件でその存在が危険視されていた占有屋さんだが、今では“絶滅種”と考えられていただけに今回出会えたのは奇跡の遭遇と言えるのかも知れない。
もちろんこれといった嬉しさや喜びは無いのだが。
【ニポポ(from トンガリキッズ)】
2005年、トンガリキッズのメンバーとしてスーパーマリオブラザーズ楽曲をフィーチャーした「B-dash!」のスマッシュヒットで40万枚以上のセールスとプラチナディスクを受賞。また、北朝鮮やカルト教団施設などの潜入ルポ、昭和グッズ、珍品コレクションを披露するイベント、週刊誌やWeb媒体での執筆活動、動画配信でも精力的に活動中。
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@tongarikids
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団塊ジュニアランド!
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全国の競売情報を収集するグループ。その事例から見えてくるものをお伝えして行きます。