トラックの近くにいるときは「ここ」に気をつけろ。元ドライバーが教える車体タイプ別危険スポット

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トラックには箱車と平ボディといった車種別にその危険度が異なるという

 日本国内における貨物輸送の約9割を担うトラック。ゆえに、家にあるほとんどのモノが、一度は何らかのトラックに積載されたことがあると言っても過言ではない。  我々の生活に密着し、常に身近を走るこの大きなクルマには、その性質上、様々な危険が潜んでいる。  今回は、過積載の危険性について述べた前回に引き続き、あまり知られていないトラックの危険性を車種別ごとに紹介していこう。  細かく分けるとキリがないのだが、一般的なトラックのカタチは主に、「箱車」と「平ボディ」という種類に大きく分けられる。  日常生活により密接なのは、箱車だ。一般道ではもちろん、人が生活する住宅街やスクールゾーン付近の路地などでも毎日のように見かけるクルマで、「配達業者のトラック」と言えば想像しやすいだろう。屋根があるため雨に強く、後ろが観音開きになるものから、サイドが鳥の翼のように開いたりするタイプ(ウイング車)まであり、荷積みや荷下ろしにおいて使い勝手がいい。  しかしその反面、前回紹介した通り、荷物が積み上げられることで重心が高くなりやすく、また、その「面」の広さから風をもろに受けることで、バランスを崩して横転しやすいのも特徴だ。今年、日本列島を幾度となく大型の台風が直撃しているが、その度にニュースでは、風に煽られたり、転倒したりしている大きな箱車がよく映し出される。  一方の平ボディは、荷台が文字通り「平ら」なトラックで、クレーンで釣り上げないと載せられないモノを積むのに適している。筆者が積んでいた金型や、林業・製材所などが扱う木材などがそれだ。車体に箱車のような「面」がないため、風には比較的強い。  そんな平ボディには、屋根の代わりに、幌(ほろ)と呼ばれる防水加工されたシートをかぶせることがあるのだが、この幌を荷台に固定する太いゴムは、雨風に晒されるとすぐに劣化。幌が風圧を強く受ける高速道路などでは、切れたゴムが道路に落ちているのをよく目にする。それゆえ、このゴムはドライバーの日常的な点検や取り換えが必須で、それを怠ると最悪の場合、突然トラックの幌がめくれあがったり、積み荷が散乱したりして、後続車両に多大な危険をもたらす恐れがある。  首都高速道路株式会社によると、平成29年度の落下物処理件数は、管内だけで26,041件(1日平均71.3件)。そのうち7,449件が木材や鉄くずで、全体の約28.6%を占めるという。  落下物はその場で留まっていてはくれない。ある日の走行車線、前を走っていた平ボディが段差で弾んだ際に落とした長さ30cmほどの「角材」が、すごい勢いでこちらに転がってきた時は、筆者も本気で死を覚悟した。  これら「箱車」、「平ボディ」の他に特筆すべき車種が、前回でも少し紹介した「トレーラー」と呼ばれるけん引車だ。先月8日、千葉県で3名が死亡する横転事故を起こしたのもこの車種である。  トレーラーは厳密に言うと、けん引される荷物部分が「トレーラー」で、引っ張るほう(運転席部)は「ヘッド」や「トラクター」などと呼ばれる。住宅街付近などではあまり見ることはないが、一般道や高速道路では、乗用車とタイヤ並べてひっきりなしに走っているクルマだ。  このトレーラーは、トラックの中でもとにかく運転が難しい。というのも、ヘッドとトレーラーは通常、ヘッド側の「カプラー」という差し込み口と、トレーラー側の「キングピン」というピンで連結されているだけであるため、トラックの中でも右左折時の内輪差がとりわけ生じやすいのだ。モップをお尻の部分で指に引っ掛けるようにして持ち、右左折してみると少しでもドライバーの感覚が想像しやすくなるだろう。  さらにトレーラーには、急ブレーキを踏むとフロントタイヤにロックがかかり、ハンドル操作もブレーキも効かず、直進しかできなくなる「プラウアウト現象」や、特に降雪時や降雨時に急ブレーキを踏んだり急ハンドルを切ったりすると、ヘッドとトレーラーが「く」の字に曲がってしまう「ジャックナイフ現象」などが起こり得るなど、常に危険と隣り合わせであるため、トラックの中でも特に繊細な車種といえる。
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トラックドライバーを惑わす死角、深視力の有無、内輪差
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