実際に、筆者も紙製ストローで新作のラテを飲んでみたのだが、プラスチックの口当たりに慣れているせいか、口に入れた瞬間、ストローというより「紙」を口に入れた感覚が強く唇に伝わった。
正直、飲み物の味にはプラスチック製ストローよりも集中できず、その弾力のなさに少なくない違和感を覚えた。が、「飲めない」といったことは全くない。
それでもやはり紙製ゆえ、15分もすれば、口元はふやけ始め、口当たりはさらに悪化。吸った時に潰れてしまっても、プラスチック製ならすぐに元の形に戻るが、紙だとやはり時間が立てばたつほど形状が崩れてゆき、飲み終える頃には、口元の紙がはがれ始めてしまう。
また、紙製ストローを使うに際し「やっかいもの」になるのが、カップにたんまり入れられた氷で、中のコーヒーをかき混ぜようとすると、その氷が障害になり、ふやけて強度を失ったストローは真ん中で折れてしまう。
筆者の隣で紙製ストローを使用していた現地のビジネスマンにもその使い心地を聞いてみたところ、「やはりプラスチック製と比べると使いにくいですね。紙製にするのは個人的には大賛成ですが、今後本格的に普及させるには、強度の改善は必須になるように思えます」と答えてくれた。
今回の紙製ストロー試験導入の対象となった店舗の店員によると、今のところ大きなクレームは出ていないそうだが、「飲みにくいからプラスチックのストローに変えてくれないか」とする声は、やはりあるという。が、口に入れた際に覚える違和感も、「ストローは紙でできているもの」という意識が浸透していけば、さほど気にならなくなるだろう。
カフェで注文する、たった300mlのアイスコーヒーは、ひと時の喉の潤しと引き換えに、半永久的に地球に居すわるゴミを生み出す。
完全な状態で提供されることだけを「いいサービス」とする時代は、もう終わりにするべきなのではないだろうか。
【橋本愛喜】
フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。日本語教育やセミナーを通じて得た60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流をもつ。滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を元に執筆中。
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『
トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは
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