MCバトルの歴史において、公共放送での放映はどんな意味を持つのか?
ラッパー初のピュリツァー賞の受賞者で、グラミー賞では5冠も達成したケンドリック・ラマー。彼がNHKの『おはよう日本』に出演したことはネットニュースとしても配信され、大きな話題となった。
近年はヒップホップの枠組みを超えて話題になることも多かったケンドリック・ラマーだが、NHKへの出演は「日本での注目度がお茶の間レベルまで達した証拠」とも言えるだろう。
そしてテレビ朝日で放送中の『フリースタイルダンジョン』で人気を拡大していたMCバトルも、ついにNHKに進出することになった。
そこで今回は、MC正社員自身も審査員として出演する『ヤングラップバトル~Bring the Beat!~』(9月28日金曜日、午後11時55分~午前1時10分)の内容と、その放送の意義について解説する。
ラジオのNHK-FMでは、『ラップが僕らのメッセージ』というMCバトルの番組を昨年から2回放送。総合で放送される『ヤングラップバトル ~Bring the Beat!』は、NHKのテレビでは初のMCバトルの番組となる。
「正直、いきなり視聴率を取るのは厳しいと思いますが、まずはネットで話題になってほしいです。ツイッターのトレンドで1位を取れたりすれば、反響の大きさを証明できますし、続編的な番組をできる可能性も出てきますから」
最近では武田真治らが出演する『みんなで筋肉体操』も、ネットの大反響により続編の検討が開始されているという。テレビ局はSNSの反応を番組制作に取り入れる姿勢を強めている。MCバトルのメジャー化を目指すMC正社員は、今回の放送を大きなチャンスと考えているそうだ。
「今回の番組は、決められたお題でラップをする変則的なバトル形式。やはりNHKでの放送なので、“危険なワード”が出てきたら撮り直しをすることもありました。また、審査員にはりりぽん(須藤凜々花)やとろサーモン・久保田さんもいますし、ショー的な雰囲気で番組が作られていることには賛否両論があると思います。俺が関わっている時点で非難する人もいるでしょうし(笑)」
公共放送のため、さまざまな制約もあるようだが、それでもMC正社員は今回の放送を「革命的なことだと思う」と話す。
「BSの番組でも地方限定の番組でもなく、NHK総合の全国放送で1時間以上もMCバトルが流れるわけですから、放送できるだけでもスゴいことなんですよ。お客さんがゼロで、エントリーMCが10人もいかない大会もザラにあったMCバトルが、ついにNHKまできた。それだけで俺は感慨深くて、収録前にはこれまでバトルで会ってきた人たちのことを思い出しちゃいましたね。今回の番組は、世間の人がMCバトルを知るきっかけになると思うし、バトルに関わる人たちの今後の生活のためにも、バトルをより大きなカルチャーにしていくためにも大事な機会だと思っています」