朝鮮半島緊張緩和が進む中、日本の防衛政策はどこに向かうべきか?

日本のMDが「粗大ゴミ」になる日

 さて、ここで9月平壌共同宣言を組み入れてこれまでの記事を補足およびアップデートします。  9月平壌共同宣言は、たいへんに画期的なものですが、その解説をすると記事が10本でも20本でも書けますし、それこそ私は全くの専門外です。ともあれ、二つの重要な宣言、文書の邦訳をリンクします。 ●「9月平壌共同宣言(全文)訳」 高麗ジャーナル 2018.09.19 歴史的な「板門店宣言」履行のための軍事分野合意書 高麗ジャーナル 2018.09.20  これだけ詳細な南北間の宣言、文書を私は見たことがなくたいへんに驚いています。両国外交担当者の努力はたいへんなものだったでしょう。  勿論、日本では、北朝鮮はまた裏切るのだろうと言う見方をする論評が多いです。しかし、外交と言うものは、裏切らないようにさせるものです。そこに努力すべきです。勿論、その背後には抑止力もあります。しかしその主役は平和追求の努力と、富の追求です。デタントは、両国および関係国にとって平和の配当をもたらします。兵力動員の解除、徴兵の解除、韓国からの大規模な投資と食糧援助、半島の大陸物流への障壁から入り口への変化など、平和の配当は莫大なものになります。  ここで、合衆国国防予算の推移のグラフを引用します。(※出典:pp.34海幹校戦略研究 2012 年 5 月(2-1) 米国防予算削減の動向とアジア太平洋の前方プレゼンス 関 博之
合衆国国防予算の推移

合衆国国防予算の推移

 このグラフからもわかるように、冷戦崩壊後、合衆国は年間10~20兆円平和の配当を得ていました。翻って日本は、この間、防衛関係予算を50%以上急増させています。(参照:pp.97-98立法と調査 2017. 12 No. 395戦後における防衛関係費の推移 沓脱和人・外交防衛委員会調査室)  合衆国は、平和の配当によってクリントン政権時代の好景気を謳歌し、.comバブルで弾けさせましたが、日本には平和の配当はありませんでした。現在合衆国は、イラク戦争とオバマ政権時代の過大な軍事費にあえいでおり、軍縮を急ぎ、平和の配当を得ようとしていますが、日本は安倍政権下、合衆国製の高額な兵器を買い漁り、防衛費と合衆国への兵器購入債務を急増させています。平和の配当どころではありません。  朝鮮戦争終戦が成立すると、国連軍の駐留理由と根拠がなくなり、その実体である在韓米軍は、撤退ないし大幅な縮小となります。同時に在日米軍もその役割の多くを失い、大幅な削減を合衆国議会が要求することとなります。こうなると北朝鮮が日本をMRBMで狙う理由が殆ど無くなります。仮に半島が連邦制国家として統一されると、合衆国への核抑止すら無用となります。 この場合、日本のMDは役立たずの粗大ゴミと化します。  勿論、デタントが崩壊する可能性は否定できません。しかし、半島デタントが大きく前進する以上、合衆国防衛の為のイージス・アショア日本配備(参照:グアム狙うミサイル 地上イージス「迎撃可能」東京新聞 2018年9月18日 朝刊)など全くの無用の長物です。そのようなガラクタにお金を投じるくらいなら、デタント崩壊の保険の為にSM-3 Block I A/Bの在庫を買い集めて、弾無しMDイージス艦に弾をたっぷりつめたほうがましです。それどころか、自衛官の待遇を大きく改善するなどやるべきことはたくさんあります
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「平和の配当」を得る努力
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