山崎:もう一つ僕が気になっているのが、自民党議員たちが安倍政権を批判しないことです。かつての自民党は派閥抗争を繰り返していたから、外から見ていてもすごく面白かった。政治家たちはみな迫力があって、様々な権謀術数を張り巡らしていた。もし安倍のような無能な人間が総理になれば、すぐに引きずり降ろされていたと思います。
だけど、いまの自民党議員たちは学歴や見栄えで選ばれたような連中ばかりで、根性もないでしょう。安倍を引きずり下ろして代わりに自分が総理になってやろうという気迫を持った人がいないんですよ。
適菜:自民党議員たちは党に公認権も財布も握られているし、国会採決の際には党議拘束がかけられるから、全然動けなくなっていますね。
山崎:これは小泉政権時代から顕著になったことだと思いますが、自民党は党内民主主義が完全になくなってしまいました。よく日本共産党は全体主義政党だと批判されるけども、自民党だって同じくらい全体主義的になっています。
今回の自民党総裁選がまさにそうでしょう。安倍はとにかく他の議員たちが出馬できないように様々な形で圧力をかけていた。その結果、岸田文雄も野田聖子も出馬を断念し、安倍の応援に回ってしまった。出馬に踏み切ったのは石破茂だけです。
岸田に至っては、派閥内からの突き上げによって板挟み状態になってしまったから、「自分はどうすればいいですか」と安倍に泣きついたと報じられています。対立候補に自分の出馬の是非を委ねるなんて考えられません。そのくせ、3年後の総裁選には出馬すると言っているわけですからね。呆れて物も言えません。
適菜:城山三郎の小説じゃないけども、岸田には「もう、きみには頼まない」と言いたいですね。
山崎:これはやはり小選挙区制の弊害です。小選挙区制を導入した結果、党内で派閥同士が競い合うことがなくなり、政治家が小粒になってしまった。そういう意味では、小選挙区制を作った小沢一郎の責任は大きいと思います。
適菜:しかし、小沢は全然反省していない。当時小選挙区制を推進したのは、小沢が担いだ細川護煕と、自民党総裁だった河野洋平、学者の世界では東大の佐々木毅などです。細川も河野も佐々木も小選挙区制の導入に反省の弁を述べているが、小沢だけはしらばくれています。
山崎:もちろん小選挙区制によって政権交代の可能性が出てきたという面はあると思いますが、安倍政権はそれを逆手にとって長期政権を築いているわけですからね。小沢の大失敗の一つだと思います。