「市街地での農薬使用」を質した議員が問責処分に
「市街地での農薬使用は適切に――」と議会で行政をただした市議が9月、問責処分を受けた。農薬への注意喚起を損なうばかりか、議会活動そのものさえ萎縮させかねない事態だが、根本には地方議会に対する市民の無関心がある。
問責処分を受けたのは、岐阜県各務原市議会の杉山元則議員。杉山議員は9月17日に開かれた定例議会で、公園や公共施設など市街地での農薬使用について、市民に注意指導を行うよう市に問いただした。
公園や公共施設などでは、害虫駆除や除草に農薬が使われることがある。これを踏まえて農林水産省と環境省は、「住宅地等における農薬使用について」という文書を都道府県に通知。2013年4月には改訂版も出された。
通知では、住宅地周辺で農薬を散布する際、散布範囲を可能な限り小さくしたり、事前に住民に知らせたりするよう、地方自治体に指導を求めている。
杉山市議も通知を踏まえつつ質問。安易な農薬使用は化学物質過敏症などの健康被害につながる可能性があることを訴えた。
ところがこれに市内農業団体が反発。「農家が偏見を受ける恐れがある」などとして、杉山議員に抗議した。さらに議会発言の取り消しを要求。杉山議員がこれを拒否したため、30日、最大会派が提出した杉山議員への問責決議案が、18対4で可決された。
杉山議員は「私は市街地での農薬散布について質問したのです。それがあたかも農業生産者の農薬使用一般を問題にしたかのように、主旨がすり替えられてしまった」と憤る。
「最大会派に所属する兼業農家の議員が、私の質問主旨を十分理解しないまま文章にして農業団体に伝えたのでは」(杉山議員)。その議員は「議会で農薬問題を扱うことは、農家に失礼だ」と主張していたという。議会で農薬を問題にすれば「農家への風評被害につながる」という「思い込み」が、問責決議へと至った格好だ。
そもそも、市街地での農薬使用に関して自治体に指導を求めているのは国だ。しかし、問責決議はこれらの経緯を無視。「農業従事者に対し配慮に欠けた」というあいまいな内容で可決された。
「地方議会は市民のチェックが効いておらず、議案の審議も不十分な時がある」と杉山議員。地方議会のモラルハザードを止められるのは、主権者である市民以外にいない。
取材・文/斉藤円華
公園や公共施設などでの農薬使用を問いただしたのに……
杉山議員「主旨がすり替えられた」
地方議会は「監視の目」が欠落?
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