基準があってないような「兵役特例措置」問題が韓国社会で議論を呼んでいる
先月18日からジャカルタで開かれた、アジア大会。日本は総獲得メダル数が中国に次ぐ、参加国第二位でフィニッシュ。金メダルは前回大会の47個を大きく上回る、59個と大盛り上がりを見せた。
一方で、韓国では大会が終わってもなお、熱が冷め止まない。優勝したサッカー男子の「兵役特例措置」問題だ。
中でも注目されているのは、U-23のオーバーエイジ枠として活躍したエース、孫興民(ソン・フンミン)。イングランド・プレミアリーグのトッテナム・ホットスパーでプレイする韓国きってのスター選手だけに、「兵役免除」賛成派と反対派で対立が激化している。
日本でも報道されている一件であるが、本稿ではその内容を掘り下げてみる。
そもそも韓国では、満18歳以上の健康な成年男子に兵役の義務が課される。満19歳までに検査を受け、「適性」と判断されれば、速やかに入隊が求められる。「病気」や「大学に在学中」などの事情で、入隊の延期を申請することも可能だが、満29歳までにはかならず入隊しなければならない。期間にして2年。
国民の義務であるため、免除されるからには、それなりの「理由」が必要だ。
例えば、過去に大きな怪我や病気をしていたり、障害を持っていたり、不遇な家庭環境など。特に大きな理由がない限り、兵役を免れることはできない。
しかし、1973年朴正熙(パク・チョンヒ)政権時代に導入されたこの兵役制度では、「国威発揚」の名の下で、兵役免除の特例措置を設けている。
オリンピックとアジア大会、世界選手権大会、ユニバーシアード大会、アジア選手権大会で3位以内に入賞した選手に限り、兵役が「免除」されるのだ。 また、大会で優秀な成績をおさめていなくとも、行政機関が一定の評価をした者と、韓国体育大学での卒業成績上位10位以内の者に対しては「兵役免除特例」を認めていた。
しかし、その評価や選考基準は非常にあいまいで、常に議論を呼んだ。
その後、1984年にはオリンピック3位以内、世界選手権大会(青少年大会含む)・ユニバーシアード大会・アジア大会・アジア選手権大会1位の入賞者にのみ、兵役免除特例が課されることになり、対象者はかなり限定された。
しかし、不思議なことに、既存の「韓国体育大学卒業成績上位10位以内」という条項は維持され続けた。
対象の範囲は1位入賞者のみと限定されたにも関わらず、兵役特例を受ける人は増えているという世論の批判を踏まえ、1990年に再度対象者が変更された。それが現在の規定となっている、オリンピック大会3位以上、アジア大会1位の入賞者というわけだ。
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