スルガ銀行だけではない。地銀の住宅ローンで破産する人々<競売事例から見える世界14>

ひとり、ゴミ屋敷で暮らしていた夫人

 玄関扉を開けるとゴミの壁。債務者の奥さんが一人で暮らしているというのだが入るに入れない。 「すみません。入れるように“荷物”をどけてもらえませんか?」  執行官の呼びかけに、うず高く積まれたゴミの山がモゾモゾと動き、上部の隙間から奥さんが現れた。なにやら野生動物の巣穴を発見してしまったような感覚に襲われていると、奥さんは“荷物”をどかすでもなく……。 「まず、ここのゴミに右足をかけてから、こちらのゴミに左足をかけて、こうやって頭から入ります」  ご丁寧に実演レクチャーを開始。これに執行官はどう応えるのか様子を伺っていると……。 「奥さん、家の中は全てこれくらいの高さに“荷物”が積まれている状況ですか?」 「はい」 「マンションですし、この販売時の図面から変わっているところはないですよね?」 「はい」 「すみませんが、カメラお渡しするんで、すべての部屋の写真撮ってきてもらえますか? 我々が入って調査するより速いと思うんで。」 「はい」  なんと的確な判断。奥さんに写真を撮ってもらうということで難を逃れたこの執行官の機転は数か月間、同地区内での珍プレー好プレー大賞として語り継がれることになった。  問題の奥さんだが、債務者の失職から精神的に不安定になってしまい、突然ゴミを溜めだすようになると、あっという間にゴミと奥さん以外は立ち入れない空間になってしまったという。  奥さんとの意思疎通が難しくなってしまった債務者と2人の子どもは、近くの小さな賃貸アパートで暮らしていた。  経済的な躓き、傾き、追い込み、不安、プレッシャー。これらは人々の心を荒廃させる。  この先行き不透明な時代に、身の丈からはみ出る大金を借り、35年も借りたお金を返し続ける必要性が本当にあるのだろうか。少なくとも35年は何があろうと現状維持ができる保証と自信はどこから来るのだろうか。  今回のような事案では、金銭的な不安から心のバランスを崩し、不動産を取り上げられる者への同情が集まりやすい。  しかし、少し視野を広げてみると地銀の現場担当者も、同様に相当なプレッシャーで何らかのバランスを崩している可能性は高い。  目まぐるしいスピードで社会の状況とバランスが変化する昨今、過去に理想とされたライフスタイルに固執する必要はあるのだろうか。消費者に無理をさせたり無駄遣いをさせたりすることは本当に社会経済活動・消費活動と言えるのだろうか。 【ニポポ(from トンガリキッズ)】 2005年、トンガリキッズのメンバーとしてスーパーマリオブラザーズ楽曲をフィーチャーした「B-dash!」のスマッシュヒットで40万枚以上のセールスとプラチナディスクを受賞。また、北朝鮮やカルト教団施設などの潜入ルポ、昭和グッズ、珍品コレクションを披露するイベント、週刊誌やWeb媒体での執筆活動、動画配信でも精力的に活動中。 Twitter:@tongarikids オフィシャルブログ:団塊ジュニアランド! 動画サイト:超ニポポの怪しい動画ワールド!
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