昭和が過ぎ、平成も終わる今、「職業選択の自由」を勝ち得たのか? 転職CMから振り返る/「サラリーマン最終列車」#4

不自由な昭和は終わったのか?

 と、ここまで書いて思い出すのは、1990年に話題になった女性向け転職誌『Salida』の伝説的CMだ。  日本国憲法第22条第1項に書かれた「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」という文言の一部を歌詞にした『憲法第22条の歌』を、仙道敦子が美術館でおもむろに歌いだす。  “職業選択の自由 アハハーン   職業選択の自由 アハハーン   自由   自由”   ’86年から施行された男女雇用機会均等法によって、女性総合職というキャリア選択が生まれ、女性が男と対等にバリバリ働いて幹部候補になる道が開かれた。Salidaはそんな時代に感応し、男性中心の昭和サラリーマン社会の中で阻害されていた女性のキャリア観を、憲法を武器として解放したわけだ。  昭和から平成に変わり、世はバブル景気の真っただ中。女性は恋も仕事も消費も全て謳歌する自由を手に入れた……はずだった。  先日、東京医科大学が女性受験者を一律減点していたことが発覚して、女性はキャリア形成の入り口から大きなハンデを負わされていたことが明るみに出た。似たような状況が企業採用の場でも報告されて、「不自由な昭和」は日本の組織の深部でガッツリ続いていたことがバレてしまった。  自由になったように見えたはずの世界は、見えないところで依然として不自由だった。こうした昭和サラリーマンのレガシーは、女性だけでなく男性をもいまだに縛っているように思えてならない。結局、オー人事のCMが今見ても他の転職CMより面白いと感じてしまうのは、広告表現のトレンドや広告効果とは関係なしに、昭和のしがらみからの「脱出」願望が今でも有効だからなのではないだろうか。  そんなことを思いながら、久しぶりに『憲法22条の歌』の原曲であるシーナ&ロケッツの『じゆう』を聴きながら仕事をしている。  “職業選択の自由 アハハーン  職業選択の自由 アハハーン  自由   自由  愛しているなら逆らわないで 見えない鎖で止めないで  愛しているなら抱きしめて 黙って見つめて抱きしめて” (『じゆう』シーナ&ロケッツ)※JASRAC申請中 <文/真実一郎> 【真実一郎(しんじつ・いちろう)】 サラリーマン、ブロガー。雑誌『週刊SPA!』、ウェブメディア「ハーバービジネスオンライン」などにて漫画、世相、アイドルを分析するコラムを連載。著書に『サラリーマン漫画の戦後史』(新書y)がある
サラリーマン、ブロガー。雑誌『週刊SPA!』、ウェブメディア「ハーバービジネスオンライン」などにて漫画、世相、アイドルを分析するコラムを連載。著書に『サラリーマン漫画の戦後史』(新書y)がある
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