日本海洋掘削株式会社は、海底石油・天然ガス田の試掘や生産井掘削を受託する企業である。設立は、1968年4月。2009年12月から2018年7月まで、東証一部上場企業であった。2018年6月22日、東京地方裁判所に会社更生手続きの申し立てを行い、受理されたと発表した。負債総額は単体で約904億円、子会社のJDNが約321億円。7月23日、東京証券取引所1部上場廃止。7月25日、東京地方裁判所から会社更生手続開始決定を受けた。
日本海洋掘削の「
有価証券報告書」によると、2015年3月期まで、財務諸表に特に問題があったようには見えない。(P.2~3)
一方、2016年3月期から2018年3月期までの3期連続で、経常損失、当期純損失を計上し、1株当たり当期純損失金額を拡大させた。2018年3月期は、155億円の債務超過となった。
債務超過に陥った理由として、日本海洋掘削は、“予想を超えた海洋掘削市況の長期低迷に起因する、2016年3月期から2018年3月期までの3期連続の営業赤字、並びに最新鋭リグ「HAKURYU-14」および「HAKURYU-15」の特別損失の計上に伴い2018年3月期に債務超過になったことにより、弊社を取り巻く事業環境は極めて厳しくなりました”としている。(参照:
記者会見冒頭メッセージ 会社更生手続開始の申立て等に関するご説明とお詫び)
「予想を超えた海洋掘削市況の長期低迷」および
「掘削装置(リグ)への過剰投資」が債務超過となった2つの要因とされる。「予想を超えた海洋掘削市況の長期低迷」に関しては、本業で稼ぎ出す現金を示す営業活動によるキャッシュ・フローは、本来、プラスの数字になるはずであるが、2017年3月期に8億円のマイナス、2018年3月期に39億円のマイナスとなった。また、「掘削装置(リグ)への過剰投資」に関しては、投資活動によるキャッシュ・フローが、2017年3月期に57億円のマイナス、2018年3月期に39億円のマイナスとなっている。(参照:「
有価証券報告書」P.2)
サイバーダインによるサイバニクス技術を駆使したロボットスーツHALを、医療・介護・福祉、重作業、エンターテイメント等で展開する事業は、依然として、将来有望な事業であろう。日本海洋掘削による巨大なリグを使って海洋掘削を行い、石油や天然ガスを掘り当てる事業も今後も継続してニーズがあり、必要な事業である。
サイバーダインは、2020年3月期の業績が会社四季報の予想通りだとすると、売上が2年で倍増しなければ利益が出ない。何よりも、売上増加が必須だと考えられる。しかし、現状は、売上が足りない。8月28日のプレスリリースで発表された、
「【ニュース】NECフィールディングが、当社のHAL(R)腰タイプの販売を開始。HAL(R)下肢タイプの保守サポートに関する基本合意も締結」のような取り組みが奏功するか? 今後も注目していけば「成長への転換」期に乗じられる可能性もまだ残っている。
日本海洋掘削は、「予想を超えた海洋掘削市況の長期低迷」および「掘削装置(リグ)への過剰投資」が失敗の原因であった。
<文/丹羽唯一朗>