アラフォーの“くささ”は加齢臭ではなかった

「スメル・ハラスメント」という言葉をご存じだろうか? 直訳どおり「ニオイによる嫌がらせ」なのだが、セクハラ・パワハラと根本的に異なるのが当人には迷惑をかけている自覚がない、ということ。我が身を振り返りつつ、汗ばむ季節の到来に対処していこう

アラフォーのくささは加齢臭ではなかった!

志水弘典氏

志水弘典氏

 数多く聞かれた「旦那の枕が脂くさい」という妻の絶望。指摘されれば、「ついにこのオレも加齢臭か……」と嘆息する人もいるだろう。しかし、最近の研究で、30代後半から40代にかけて気になりだす古いアブラのようなニオイは、いわゆる「加齢臭」とは別物であることが判明した。そのニオイを解明したマンダム技術開発センター・スキンケア開発担当の志水弘典研究員に聞いた。 「『加齢臭』とは、枯れ草のような、ロウソクのロウのようなニオイのこと。原因は主に胸元や背中などから発生する『2‐ノネナール』という臭気物質で、これが顕著に増加するのは50代からということもわかっていました。そもそも30~40代のニオイは、若い世代の汗臭とも初老世代の加齢臭とはまったく違う。それは何なのかと疑問に感じ研究を始めました」  その結果、たどりついたのが「ミドル脂臭」という新たなニオイの存在だという。いったいどんな特徴があるのか? 「ミドル脂臭はおもに後頭部や頸部から発生するもので、原因は『ジアセチル』と呼ばれる臭気成分と判明しました。私もそうですが、中年になると頭からよく汗をかきますよね? その汗から分泌される乳酸が、頭皮の細菌により代謝・分解されて発生するのがジアセチルなんです」  年をとり、汗をかく場所が変化するのと同時に、さらには、老化による肌の抗酸化機能の衰えもまたこのニオイの原因になる。 「ジアセチルの生成は、肌の酸化反応により促進されます。もともと人間には肌の酸化を防ぐ機能がありますが、30代からこれが衰えていくんです」  その一方、40代前後ではまだまだ皮脂の分泌量は変わらず、皮脂と相まってニオイは増悪。ミドル脂臭に一般的な汗臭に、加齢臭も出始めて……アラフォーは何かと「くさい」お年頃なのだ。 「ジアセチルは早い人では20代中盤から出始め、40歳を境に減少し始めます。基礎代謝も筋肉量も落ちて汗をかきにくくなる60代には、ミドル脂臭は徐々に減少。同じ理由でワキの汗臭も徐々に薄くなっていきます。そうして最後に残るのが加齢臭というわけです」  そう考えると、40代がくさいのはまだまだ脂がのっている証拠!などとうそぶいてもいられない。 「洗髪の際、後頭部を1分も洗っていない男性も珍しくありません。頭皮の脂は加齢とともにサラサラ脂からドロドロ脂になって毛穴に詰まりやすくなりますから、ディープクレンジング処方のシャンプーで洗いあげるのもオススメです」 【志水弘典氏】 マンダム技術開発センター・スキンケア製品開発課研究員。臭気判定士。同社にてデオドラントの基礎研究を行う。800人の男性のニオイを調査・解析し、ミドル脂臭の存在をつきとめた <加齢臭とミドル脂臭の違い> ●加齢臭 原因物質:2-ノネナール 増加する年齢:50代 おもな発生部位:背中、胸元 ニオイの特徴:枯れ草・干し草・古い図書館・ロウソクのロウ ●ミドル脂臭 原因物質:ジアセチル 増加する年齢:30~40代 おもな発生部位:頭頂部、後頭部、襟足 ニオイの特徴:どんよりとした古い天ぷら油 <取材・文/HBO取材班>