経済連携協定で外国人の介護福祉士も来日 写真/AFP=時事
突然死や失踪も多い外国人技能実習制度が、国連機関から批判されるなど、外国人の受け入れに問題を抱える日本。今年は入国管理施設での難民申請者の自殺もあり、「違法な暴行で骨折した」と大阪入管に収容のトルコ人男性が国を提訴したこともニュースになった。
そんななか、外国人受け入れに関する政策が大きく動いた。まず、問題が山積の入国管理局については、7月24日の「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」後に上川陽子法相が入国管理庁への格上げを検討中と発表。
現在、法務省の傘下にある入国管理局は「入国管理庁」に格上げが検討されている。新たな在留資格の創設でその役割は増していきそうだが、問題点もある 写真/AFP=時事
ある財務官僚は「支持率が下がるから『移民』という言葉は使わないが、以前に比べて外国人労働者受入れのハードルはさらに低くなる。入管を省庁に格上げするのは本気度の現れで、この点だけを見ても相当な意気込みを感じる」と話す。
では、どのような制度の変更により、外国人労働者が増加する見込みなのか? まず、その方針が示されたのは6月の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)。ここでは、従来の技能実習制度から移行した場合、計10年間の滞在が可能となる在留資格「特定技能(仮称)」の新設が示された。運用は来年4月の開始予定。想定する職種は農業、介護、建設など5業種。2025年頃までになんと50万人超の受け入れを見込んでいるという。
《外国人受け入れを巡る動き》
●「骨太の方針」で新たな在留資格の運用を検討
●来年4月から建設、農業、介護など5分野を対象に労働者を受け入れ。
●’25年頃までに50万人の受け入れを想定
●法務省入国管理局を再編、入国管理庁に格上げ
「これまでの日本政府は『労働力不足に対応した外国人労働者の受け入れは行わない』というのが基本方針。日系人や技能実習生の受け入れで、その不足を補ってきました。それが今回の骨太方針では、人手不足の深刻化を理由に外国人労働者の受け入れを公式に認めた。その点は一定の評価をします」
そう話すのは国士舘大学教授の鈴木江理子氏。一方で政府が新制度を「移民政策とは異なる」と強調した点について四天王寺大学講師の津崎克彦氏はこう分析する。
「今回の骨太の方針は、経済界からの要望に応えつつ、『移民』という言葉で不安を覚える人たちへの配慮もしたもの。その姿勢は、’90年の入管法改正から変わっていないと言えるでしょう」