「安倍首相は休みすぎ」? 米大統領は「バカンス」をどう過ごしているのか

世界の首脳も「休み」は批判の種になる

 充実した夏休みを送った安倍首相。ただ、前述のとおり、その緩み切った姿勢に対して批判的な声も少なくなかった。  しかし、世界基準からすれば、バカンスをしっかりとることは大事なのではないのか? アメリカ大統領の例を見てみてみよう。 「アメリカの大統領も長期休暇を取ります。トランプが就任1年目にほぼ毎週末フロリダにある自分のリゾートに行っていたのは有名な話です。だいたい歴代のどの大統領もゴルフに行きますね」(アメリカ人・男性・37歳)  何かと批判されがちなトランプ大統領だが、オバマ元大統領も2014年、イラク空爆が行われていた最中に東部マサチューセッツ州の保養地マーサズ・ビンヤード島でゴルフを満喫して共和党から批判を受けている。  そんなオバマ元大統領を「休暇を取りすぎだ」と批判していたのは誰あろうトランプである。大統領になる前は「私はバカンスなど取らない」とまでは言っていたが、蓋を開けてみれば2017年8月にはオバマ元大統領の倍近くにあたる17日間の長期休暇を取っていた。  今年も8月2日から13日までしっかりと休んでゴルフを満喫したようだが、トランプ自身は働きながら休むという意味なのか「ワーキング・バケーション」と自称しており、ホワイトハウスも公式には「休暇」を表明せず、ニュージャージに行ったのも「ホワイトハウスが改修中」だったからだとしている。ゴルフをしながらもスマホ片手だったのはきっと「ワーキング」だったんだろう。もっともツイッター更新も頻繁になされていたのでそっちかもしれないが……。 「天敵」であるCNNには“He golfs. He schmoozes by the pool. He eats dinner with friends.Just don’t call it a vacation.(トランプはゴルフをして、プールでバカ話をして、友人とディナーを食べる。ただそれを「バカンス」と呼ばないように)”と皮肉たっぷりに書かれている。(参照:Peek inside Trump’s total non-vacation in New Jersey:CNN)  ゴルフしてお仲間とディナーを食べる……。どうも日米首脳の夏休みの過ごし方も基本的には日米共通なようだ。ちなみに、フランス人やポーランド人など、ヨーロッパの首脳は冬の休暇に「スキーをする」という人も少なくない。 「メリーランド州の森にはキャンプ・デービッドという避暑地があります。各国首脳との会談だけでなく、“逃げ場”としても使われますね。オバマ元大統領は自身が育ったハワイで家族とすごすことが多かったです。同じくジョージ・ブッシュもよくテキサスにある牧場に行っていました。アメリカ大統領は警護が大変なので、行きたいところに行くというのは難しいんでしょう。そのための費用もかなり高額です」(同)  日経新聞は8月15日の記事で、「各国首脳、働きながらの夏休み 精力外交アピール、内政にも目配り」と題して、各国の首脳陣の休暇について紹介している。記事によれば、フランスのマクロン大統領は2週間ほど休暇を取ったが、休暇先にメイ英首相を招待して会談したり、トランプ大統領やプーチン大統領と電話会談するなど仕事寄りの休暇を過ごしたほか、韓国の文在寅大統領は7月30日から8月3日まで休暇を取得し、地方の休暇施設で読書や森林浴をして過ごしたとしている。このときの読書リストも大統領府では公表されているそうだが、国民向けのアピールも読んだ本でされているという。  いずれにしても、国のトップになれば休んでいても警護などに税金はかかるので、国民からの視線が厳しくなるのである。 「メディアにとって首脳の休みはいつも批判の種になります。しかし、先の予測が難しい仕事なので、いつも大統領が休暇に行くと“重大”な出来事が起きることが少なくない。そして、批判材料として使われる。ちなみにネット上で調べると、共和党出身大統領のほうが多く休みを取っているようです」(アメリカ人・男性・35歳)  ただ、問題は休みをとること自体ではない。むしろ、10日間程度で「休みすぎ」という批判は、社会全体にも返ってくる筋の悪い批判にもなり得る。批判すべき点を誤れば社会全体の首を絞めることにもなりかねない。  むしろ、任期中に出産し、6週間の産休を取得した後、公職に復帰したニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相の例などは、多くの働く女性に希望を与えた事例だろう。(参照:ニュージーランド首相、産休明け復帰:BBC)  休んでるときにゴルフをしようが友達とBBQをしようがプールで馬鹿騒ぎしようが一向にかまわない。むしろ、「働いているときに」どのようにすごしていたかということをきちんと批判すべきなのだ。国会開催時に、自身の疑惑についてきちんと説明し、総裁選に際しても石破茂氏が呼びかけた討論に応じるなど、正々堂々とした姿を見せることが重要なのだ。 <取材・文/林泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
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