まちゃー / PIXTA(ピクスタ)
第196回国会が閉幕してから早くも1か月が過ぎた。異質で異様だった前国会を、改めて時系列で数回に渡り振り返ってみたい。(※国会の議事録の性質上、全発言を引用するととても冗長になるため、一部抜粋しているものがあるが、大意は変わっていない)
今回は、森友と加計と文書改ざん問題で紛糾した「1月~4月」を振り返ってみよう。
“8年間続いた慣例が破られたということで、そんなに野党の質問が嫌なのかなというふうにも思わざるを得ないんですけれども”長妻昭 政調会長(立憲民主党)
“国会でお決めになることだろう、このように思います。”安倍晋三 総理大臣(自由民主党)
――1月29日 衆議院予算委員会
国会の冒頭、最も話題になったのは、
与野党の質問時間の配分に関する問題だった。
慣例的に野党に多めに配分されていた質問時間を、石崎徹衆院議員を中心とした自民党の若手議員が中心となり、質問の機会を増やすことを要望した、ということらしい。(参照:
自民3回生ら国会質問時間配分の見直し要望「与党2、野党8」は「野党に過剰な配分」産経新聞)
’17年は「プレミアムフライデーの感想」「婚活イベントに行った感想」などを閣僚に尋ねるなど大変意義深い質疑をされていた石崎議員。
“TOKYO縁結日二〇一七というイベントが開催されました。(中略)約3000の方が訪れたということで、大盛況であったというふうに聞いております。こうしたところに加藤大臣みずから出られて、その御感想なりをお伺いしたいと思います。”――平成29年3月15日 衆議院内閣委員会
“実際、大臣も働き方大臣ということで、プレミアムフライデー、百貨店に行かれたということでございますが、このあたり、御感想を少しお伺いできればと思います。”――平成29年3月15日 衆議院内閣委員会
今国会では一度しか質問の機会がなかったようだが、与党の質問時間が半分あれば、石崎議員の質問の場も増え、もっといろいろな感想を閣僚から引き出せたかもしれないと思うと、実に残念だ。
ともあれ、このような
「野党の質問を嫌がる」総理、あるいは自民党の姿勢は、今国会を通じて一貫していたと言える。
ちなみに、この交渉の舞台裏については、辻元清美国対委員長が当時を振り返り、このように述べている。
“森山委員長も私も電卓を持って、自民党国対の部屋で向かい合うわけですよ。そして、アイスクリームを食べながら、電卓をバチバチ叩いて、「これでどうだ!」、「これでどうだ!」と数字を見せ合う。そのうち、自民党が「与党5対野党5」と言っていたのが、「1対2」になって、「3対7」になって、最終的には慣例通りの「2対8」に戻して……。”(参照:
「史上最悪の国会論戦」を動かした「ハーゲンダッツ」と「保守の知恵」:文春オンライン)
さて、冒頭国会の一つの焦点は、国税庁長官に昇進した佐川宣寿氏が証人喚問されるのか? という点に関する駆け引きだった。
“総理は、適材適所だと佐川長官のことをおっしゃいました。適所にいる適材であれば、しっかりとこの場に出て話すことは可能なはずです。なぜ隠すんですか。”西村智奈美 衆院議員(立憲民主党)――2月2日 衆議院予算委員会
このとき、まだ政府は佐川氏を
適材適所と述べており、また佐川長官は慣例となっている
就任時の記者会見も行わないという異様な状態だった。
“政党支部の活動だから問題がないとか、名前が書いてないから問題がないとか、そういうことではなくて、そもそも法の趣旨として、物を配って政治活動をしてはいけないんだということなんです。”青柳陽一郎 衆院議員(立憲民主党)――2月5日 衆議院予算委員会
森友・加計以外に注目されたスキャンダルの一つに、
茂木経産大臣の線香配布問題があった。同じような事案で議員辞職をした小野寺大臣が答弁を求められ、困惑した様子を見せていた。
前国会に引き続き、
江崎鉄磨沖縄北方担当大臣の失言も問題になった。
江崎大臣は健康問題で退任し、後任に福井照議員が就任するものの、色丹島を「しゃこたん」と誤読するなど、沖縄北方大臣としての見識を疑われる事態が相次いだ。また、米軍機の墜落に合わせ、松本文明内閣府大臣が発言した内容が問題となり、副大臣を事実上更迭された。
“それ(米軍機事故)で何人死んだんだ”松本文明内閣府副大臣(自由民主党)――1月26日 衆議院本会議 沖縄県で相次いだ米軍機事故をめぐって共産党の志位氏に野次
個人的には、この暴言は
議員辞職級であると思うが、まあ、これで辞めていたら、今国会はずいぶん欠員が出てしまうだろう。