沖縄県知事選の前哨戦、「名護市議選」が決める沖縄の将来

争点を反らすため延期された土砂投入

 当初の計画では8月17日に土砂が投入される予定になっていましたが、承認撤回を表明した翁長雄志知事が急逝したことを受け、計画通りに土砂を投入したら世論が思わぬ方向に動いてしまう可能性があるため、土砂の投入は事実上、9月30日の沖縄県知事選の後に延期されました。どうせ9月30日に宜野湾市長で日本会議に所属している佐喜眞淳さんが勝てば、好きなだけ土砂を投入できるのです。こんなタイミングで慌てて土砂を入れる必要がありません。  土砂の投入は延期されましたが、工事そのものが延期されているわけではありません。そこらへんの家電量販店で買ってきたショボいデジカメの60倍デジタルズームで、この日も現場では工事が進められていることを確認しました。基地の前では抗議者たちが「止めてやったどー!」と右手を挙げていたのですが、確かに土砂の投入こそ止まったものの、工事そのものは夏休みもなくゴリゴリに進められ、今日も埋め立てる海の面積を広げようとしていたのです。  辺野古基地の建設予定地は、実際に行ってみると、めちゃくちゃ広いです。あの広大な敷地に土砂を投入し、その上に麻生太郎財務大臣のご実家の会社である「麻生セメント」のセメントが大量に流し込まれる計画になっているわけですが、とっても広い海の上に基地を作るのですから、そのセメントの量は莫大です。そこらへんのビルを工事したところで、これほどセメントを使うことはないでしょうから、この辺野古基地がどれだけの利権を生んでいるかが分かるかと思います。  そして、基地を作ると地元の土建屋が儲かるように言われていますが、麻生セメントは福岡県福岡市の会社です。地元の土建屋がまったく儲からないとは言いませんが、下請けの下請けの下請けとしてギリギリの値段で発注されているので、今のご時世、幾重にも下請けになっているような会社がウハウハになるほど儲かるはずはなく、沖縄の最低賃金が低いこともあって「どうせ他の仕事をしていたら、もっとお金をもらえていないのだから、これくらいの金額でも満足だろ?」と言わんばかりに、ずいぶんとダンピングされた値段を提示されることになります。  まるで辺野古基地があれば地元の経済が潤うかのように言われていますが、もっと現実を見たほうがいいのです。  本当は基地経済に頼るよりも観光経済にシフトしたほうが圧倒的に儲かってしまう現実。なにしろ、観光経済の場合には観光客から直接的に沖縄の企業にお金が支払われるわけで、本土から搾取する人間が少ないのです。しかし、基地より観光の方が沖縄の経済が回るなんてことがバレたら、本土の企業がウマウマできなくなります。これはいけません。沖縄の皆さんにはいつまでも低賃金で頑張って働いていただき、企業の利益に貢献していただかなければならないのです。  だから、大きな声で言ってやらないといけないのです。「あの人たちはプロ市民なので、あんな危険な思想の人たちの言うことを聞いてはいけませんよ!」と。こう言えば、自民党ネットサポーターズに加入しているようなネトウヨが盛り上がり、ネットから世論が作られます。観光よりも大きな基地を作った方が儲かる気がする。こうして今日も地球はうまく回っているのです。
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「沖縄の将来」を無視した再編交付金頼み政策
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