2番目の原因として疑われている「上流のダム緊急放水」については、嘉田氏が国交省の担当者を次のように問い質した。
「河川法52条では、河川管理者(国交省)は洪水の恐れがあるときは、ダム設置者(岡山県、中国電力)に対して、必要な措置をとることを指示することができるはず。なぜ今回、やらなかったのか」
実は、高梁川上流にあるダムで堤防決壊時に緊急放流をしたのは、県管理の「河本ダム」(高梁市)だけではなく、貯水量が約7倍の中国電力管理の「新成羽川ダム」(同)も同じだった。視察参加の山崎氏が入手したデータによると、新成羽川ダムの緊急放水量は河本ダムの3倍弱にもなっていた。下流の被害の主因である可能性が高いのだ。
しかし、現地視察で国交省の担当者に「豪雨に備えてダムを空に近づける『事前放流』を中国電力に指示したのか」と聞くと、「していません」と回答。河川法52条を行使して洪水を避ける措置をしていないことが明らかになった。
高井氏は、視察後にブログでこう問題視している。
「どうやらこの規定は『伝家の宝刀』なっており、なかなか抜くことができない、つまり『空文』(規定はあっても使われない条文)になっているようです」
これらの対策がとられていれば、被害を防ぐことができたかもしれない。やるべきことをやらなかった、“人災”の様相がどんどん露わになってくる。
<取材・文・撮影/横田一>
ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた
『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他
『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数