薬剤師が教える「紳士のお悩み薬」の話。安いからと安易に個人輸入に頼るのは危険。

あの悩みの薬はどんなもの?

◎AGA(薄毛、抜け毛)  さて、抜け毛や薄毛の薬には何種類かありますが、日本国内で効果を認証されている医療用は2種類です。  髪が抜ける原因は、諸説ありますが多くの場合AGAと言われています。  ざっくり言うと髪の毛が抜ける物質であるジヒドロテストステロンが男性ホルモンを元に産生されてしまいます。5α還元酵素というのが男性ホルモン→ジヒドロテストステロンに変化させてしまう元凶で、これが1型と2型があります。  現在日本で認証されているのは2種類で「プロペシア」は2型のみを「ザガーロ」は1型、2型を両方とも阻害します。当然どちらも阻害するザガーロのほうが作用は強力です。  髪の毛の抜けるサイクルを遅くするため、抜け毛が少なくなり結果的に髪が増えます。ただ、髪の抜けるサイクルを遅くするということは、完全に毛根が死滅していると残念ながら効果がありません。  実は筆者は学生時代ブリーチかけまくり、その後の就職による黒染めのせいか25歳ぐらいから頭頂部がかなりヤバい感じになっていたのですが、必死のリサーチによりザガーロの海外版にたどり着き現在あれから5~6年経っていますが髪はフサフサです。(服用は6か月ほど)  副作用として自分が感じたのは性欲減衰で、これは1か月ぐらいで元に戻ったように思います。一応国内のデータなのですが副作用発生率は10.9%で主な副作用は勃起不全3.2%、性欲減衰1.7%女性化乳房1.5%が起こるとされています。  国内で医師に受診して処方される場合は、1か月7000~20000円くらい、個人輸入の場合は1か月1500~4000円のコストがかかります。  一方、市販のものでは「リアップX5」という発毛剤が有名です。  この薬剤は元々現ファイザー製薬が血管拡張薬として開発していた薬を、発毛用に転用した薬で毛乳頭細胞や毛母細胞の活性化することによって発毛効果を発揮します。……と販売元からは説明しているものの詳細はよくわかっていません。  日本では新しめの薬なのですが、海外では30年以上前に販売されており「Rogaine」という名前で販売されています。実はこの薬は飲み薬もあるのですが、副作用が発見されたため国内では外用薬がスタンダードになっています。  先述のプロペシアやザガーロと薬理作用が違うため、併用により効果が上がることが期待できます。(その分高くなってしまいますが)

◎勃起不全の薬

 皆さんは性行為はお好きでしょうか? 人生のクオリティを上げるために、なかなか避けては通れない道なのですが、源泉であるテストステロンの量は20歳前半ぐらいでピークになり早い人で20代後半から性欲減衰を実感し始め、個人差があるものの多くの人は40~50代で強く性欲減衰を実感すると言われています。  性欲減退に悩む人にとって、勃起不全薬は気になる存在だと思います。  元々このカテゴリーの薬は最初のほうでもチラッと触れたのですが、狭心症の薬として米国ファイザー製薬が開発していたのですが、臨床試験の成績が芳しくなく開発中止の憂き目にあったものでした。しかし、余剰薬剤の返却を渋る男性の被験者がおり理由を問うたところ陰茎の勃起を促進する効果が発見されそれを適用症状として販売されました。  ただ、服用にあたっては注意が必要です。国内でも硝酸薬(ニトログリセリン)などとの併用で心停止して死亡した例も存在するのでAGAの薬などよりも数段注意が必要な薬剤です。使用前に医師に相談したほうが良いのはそのためです。  現在は3種類販売されています。 ・バイアグラ(ジェネリックあり):作用時間4時間、価格が最も安く効果も高い。食事に影響を受けるため空腹時、若しくは食後1時間以降の服用が推奨。海外製はジェネリックも豊富で値段もさまざま、昔は偽物が多かったですが現在は価格が下がってしまったせいもありそこまで偽物も当たらなくなってきました。 ・レビトラ:作用時間は4時間~8時間、効果が出るのが早く副作用も少ない。バイアグラより食事の影響は少ないが空腹時か食後30分以降の服用が推奨。海外製のジェネリックは存在しており、効果も遜色ないハズですが、バイアグラほど種類は豊富ではありません。 ・シアリス:作用時間は36時間で食事の影響は受けにくい。副作用が少なく使いやすいが、効くのは他より遅め。国内では2018年8月現在はジェネリックはありませんが、そろそろ出てくる……かもしれません。  現在は価格もこなれており、バイアグラの場合は、国内で医師に受診した場合、1錠450円~、海外製を個人輸入した場合、1錠約80円~となっています。

インドの「ジェネリック」は玉石混交

 実は色々調べているとお気づきになる方もいらっしゃるかもしれませんが、インド製は特許期間内であっても普通にジェネリック医薬品が安価に存在しています。  これは、インドの特許制度が成分に対してでは無く、製法に対して特許を許可しているので新薬であろうとインド製のジェネリックは手に入ってしまいます。 ただし、自分と開局している友人達で色々と使ってみたところ銘柄によって効果が安定してないこともあり銘柄によっては注意が必要な場合も多い気がします。  繰り返しますが、基本的に海外製の医薬品は自己責任になってしまうので注意してください。  自分は100Kg近くある巨漢なのですが、ハンガリー製のバイアグラの100mg錠(日本製は50mgまで)を飲んでみたときは効くは効いたんですが頭痛がひどくてそれどころでは無かったのを覚えています。用量も日本とは違うので注意したいですね。  いかがだったでしょうか?現在はインターネットの発達により薬を得る手段は多岐にわたっています。経済性を考えれば個人輸入という選択肢もあるかもしれませんが、何よりも最優先すべきは、安全性であることは言うまでもありません。 一般人の知らない「クスリ」の事情 第4回 <文/長澤育弘> ながさわやすひろ●薬学部卒業後、救急指定病院在職中に認定薬剤師を取得。その後、調剤薬局やドラッグストア、在宅専門薬局で管理薬剤師を務める。2016年9月に「池袋セルフメディケーション薬局」(http://www.self-medication.co.jp/)を開局。「患者様が自分で健康を管理し自分で治療する」という促進を主な目的に掲げている。
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