中国の複数の旅行会社へ連絡してみると、やはり予定されていた中国人の北朝鮮ツアーが中止となっていた。
「送られてきた通知文には入国停止とだけ書かれていてキャンセル料がどうなるかなど詳細が書かれておらず、もしキャンセル料を我々が負担することになると大きな損害になります。まるで数年前のエボラ出血熱感染対策で突然入国停止になった状況のようです」(瀋陽の旅行会社)
この旅行会社は、入国停止の前日9日に入国した3泊4日ツアーがありそのツアーは予定通り観光して12日に帰国する予定とのこと。なお、中国の旅行会社によると、入国停止に関しては2泊以上必要な平壌のツアーのみで、北朝鮮東北部の羅先特別市への入国、滞在はでき、中国人向けの新義州日帰りや1泊ツアーは本日も行われているとのこと。そのため観光客の受け入れを停止しているのは平壌だけと考えたほうが合点がいく。ただ、外国人観光客の9割強は平壌に滞在するので事実上の全面停止に等しい処置といえる。
書き入れ時の夏に20日間も観光客受入を停止するほど豪雨の被害が大きいのか実態は定かではないが、何らかの被害があったとすれば、北朝鮮にとって非常に重要な9月9日の建国70周年記念を盛大に行い国際社会へ存在感をアピールさせるべく、一気に復旧工事を進めて万全の状態で迎えたい思惑が感じられる。
一方で、今回の入国停止措置とは無関係なものの、英語でのグループツアー参加中に拘束されたと報じられる日本人男性の安否が心配される。
つい先日には、日本人の若者が泥酔して高麗ホテルの備品を壊して一時拘束されたという話もあるが、こちらは多少の罰金と誓約書を書いただけで開放され、無事帰国しているという。このときの処分は、北朝鮮としては寛大な処置だと思ったが、背景には今回の拘束の一件があったのかもしれない。
一部ではスパイ容疑とも伝えられており、どのような理由で拘束されたのか、日本人を拘束して日本政府との交渉材料に利用するのかなど狙いは不明確であるが、拘束者の無事と早期解放を願いながら事態の推移を見守りたい。
<取材・文/中野鷹(TwitterID=
@you_nakano2017)>
なかのよう●北朝鮮ライター・ジャーナリスト。中朝国境、貿易、北朝鮮旅行、北朝鮮の外国人向けイベントについての情報を発信。東南アジアにおける北朝鮮の動きもウォッチ。北レス訪問が趣味。 Twitter ID
@you_nakano2017