会社よりも田舎の閉鎖性のほうが、楽しくて安心で自由だ
匝瑳に移住して就農した越智さん夫婦のインタビューが、ネットニュースになった。そこからいくつか拝借しよう。
「移住して1年目は、周囲の方々からは我が家の人となりを遠くから『観察』されていたように思います。それでも、道で会えば挨拶もしていただきましたし、地域性もあると思いますが、疎外感を感じることはまったくありませんでした」
「移住2年目の中頃から、お葬式の手伝いや忘年会といった地域の催しにお呼びがかかるようになりました。このころには子どもも2人になっていたので、道であえばかわいがってもらえました」
「アドバイスやサポートなど、さり気なくしていただくことが多いです」
「一度うちのニワトリが脱走して、ご近所の畑を荒らしたことがありました。お菓子を持ってお詫びに伺ったら、逆にそれが新たなお付き合いの始まりになりました。礼儀を忘れずにお付き合いすれば、失敗も、地域に入っていくチャンスになると思います」
「感謝の気持ちを忘れずに、『ありがとうございます』と伝えていくことを常に忘れないことも大切だと思います。ちょっとの一言があるだけで人間関係って全然違うと感じています」
「私たちも匝瑳で本当にたくさんの方に出会い、お世話になりました。家を見つけていただいたり、農機具を分けていただいたり、野菜や食べ物をもらったり、子どもを可愛がっていただいたり…おかげさまで匝瑳の地が大好きですし、これからは少しずつでも恩返ししていければと思っています」
越智さんも言う、移住者たちも言う、俺も言う。
「もう会社の閉鎖的な世界になんて戻れない。田舎の閉鎖性の方が、よっぽど楽しくて安心で自由だ」
心配するな、田舎の空に羽ばたけ! 世界から“中心”をなくそう!!
【たまTSUKI物語 第7回】
<文/髙坂勝>
1970年生まれ。30歳で大手企業を退社、1人で営む小さなオーガニックバーを開店。今年3月に閉店し、現在は千葉県匝瑳市で「脱会社・脱消費・脱東京」をテーマに、さまざまな試みを行っている。著書に『
次の時代を、先に生きる~まだ成長しなければ、ダメだと思っている君へ』(ワニブックス)など
30歳で脱サラ。国内国外をさすらったのち、池袋の片隅で1人営むOrganic Bar
「たまにはTSUKIでも眺めましょ」(通称:たまTSUKI) を週4営業、世間からは「退職者量産Bar」と呼ばれる。休みの日には千葉県匝瑳市で NPO
「SOSA PROJECT」を創設して米作りや移住斡旋など地域おこしに取り組む。Barはオリンピックを前に15年目に「卒」業。現在は匝瑳市から「ナリワイ」「半農半X」「脱会社・脱消費・脱東京」「脱・経済成長」をテーマに活動する。(株)Re代表、関東学院経済学部非常勤講師、著書に
『次の時代を先に生きる』『減速して自由に生きる』(ともにちくま文庫)など。