過去2年で最大規模のIPOとして話題沸騰の「中国鉄塔」。上場で目指すは、世界最大の5Gネットワーク

中国鉄塔の鉄塔(吉林省延辺朝鮮族自治州延吉市)

 2018年8月8日、中国の北京市に本社を置く中国鉄塔が香港証券取引所に上場した。中国では数字の8が好まれ、中国鉄塔にとって8が並ぶ縁起のよい日に上場を果たした。調達額では世界的にみて過去2年で最大規模の新規株式公開となったが、中国鉄塔の知名度はあまり高くないだろう。果たして、中国鉄塔とはいかなる企業で、資金はどのように使われるのだろうか?

中国の通信会社3社によって作られた

 中国で全面的に電気通信事業を手掛ける事業者としては中国移動通信(中国移動)、中国聯合網絡通信(中国聯通)、中国電信が存在し、3社はまとめて三大通信運営商と呼ばれる。いずれも中国の国有企業で、三大通信運営商が保有する資産は国有資産となる。  携帯電話用の電波を送出する基地局など電気通信事業に必要な通信設備は3社が個別に運営していたが、設備投資の効率化や国有資産の効率的な管理を目指し、3社が新会社を設立して基地局を共同運営する案が出た。  2014年3月~4月には議論が本格化し、国務院(日本の内閣に相当)の直属機関である国務院国有資産監督管理委員会や電気通信分野の規制などを担う政府機関の工業和信息化部も交えて新会社の設立に向けて調整が進んだ。  そして、2014年7月15日に三大通信運営商が出資した中国通信設施服務を設立された。  設立時の出資比率は中国移動が40.0%、中国聯通が30.1%、中国電信が29.9%である。社名は2014年9月11日に中国通信設施服務から現在の中国鉄塔に変更された。  三大通信運営商は2015年10月14日に中国鉄塔への基地局の譲渡を発表した。  中国鉄塔は基地局の対価を現金と新株で支払い、同時に中国国新控股が中国鉄塔の新株を現金で取得して出資する計画も発表した。なお、中国国新控股は国務院国有資産監督管理委員会が設立した企業で、国有資産の監督管理を主要事業とする。  2015年12月31日に三大通信運営商と中国国新控股に対する新株発行が完了し、出資比率は中国移動が38.0%、中国聯通が28.1%、中国電信が27.9%、中国国新控股が6.0%となった。中国鉄塔に出資する4社は国務院が監督管理する中央企業で、中国鉄塔は中央企業に含まれないが、いずれも実質的に国策企業である。
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中国のモバイル市場の基地局ビジネスを独占
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