しかし、この決定を待つまでもなく、欧州委員会の反逆児ポーランドは、
来年からサマータイム制度を採用しないという方針を固めている。
同様に、ヨーロッパの中央部から北部に位置するドイツ、ベルギー、オランダ、スェーデンそしてフランスも
省エネへの効果は少なく、むしろ
体調管理に弊害が多いとしてこの時間変更制度に反対してサマータイムの廃止に強い関心を示している。(参照:「
Bolsamania」)
南欧でもサマータイムの採用に反対する意見が次第に増えている。
スペイン時間合理化委員会(Arhoe)の会長ホセ・ルイス・カセロは、欧州共同体でのサマータイム制度の廃止を主張している。彼は「時間の変更は
健康維持に有害であり、それを専門家も裏付けしている」と述べ、更に、「
経済面以上に、市民の福祉が大事で、ヨーロッパ市民の健康と休息が最も重要である。
24時間の生活の周期を変えるということは全ての人間に悪影響を及ぼすものだ」と強調した。(参照:「
El Economista」)
2008年のスェーデンでの研究では、サマータイムに変更して最初の3日間で、心臓発作が生じる可能性が5%高くなるということが明かにされているという。
また、別の研究では、時間を変更した翌日月曜は交通事故に合う可能性が高いという報告もあるそうだ。(参照:「
El Pais」)
ムルシア大学の生理学教授で、時間生物学研究所の所長でもあるフアン・アントニオ・マドリードは、「良い眠りに就くためには日没後少なくとも2時間余り周囲が暗くなっている時間帯が必要だ」としている。サマータイムを採用すると、時間が1時間進むことによって日没時間が遅くなるため、「結局、睡眠時間が30分から40分少なくなる」と指摘している。
勿論、サマータイムの維持に賛成派もいる。それによって、日照時間が増えることによって、仕事を終えた後も街はまだ明るいのでエンジョイできる余暇の時間が増える。特に、南欧は観光業が盛んで、観光者の消費意欲をそそるにはサマータイムの採用は最適である。
ただ、ただでさえサービス残業などが問題となりがちな日本企業で、そのメリットがどこまで活かせるかは疑問が残る。
筆者自身も時計の針を前後させることに無駄を感じている。時間が変更になる前日の寝る前に私は時計の針を調整してから寝ることにしているが、無駄な作業だといつも感じている。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身