続いてはコペンハーゲン在住のイギリス人に両国の仕組みを聞いてみた。
「イギリスにはテレビライセンス料というものがあり、年間約2万1600円かかります。テレビだけでなく、パソコン、スマホ、タブレット、ゲーム機、DVDレコーダーなども含まれるので、『テレビがない/観ないから』と断るのはかなり難しいです。いっぽう、デンマークにはメディアライセンスという制度があり、どんな形であれ家にメディアがあれば払わなくてはなりません。自分で料金を払っているWi-Fiがあるだけで支払う必要があります。こちらは年間約4万3700円も払わきゃいけない……。バカげてますよ。ただ、実際には支払いをしらばっくれている人も多いです(苦笑)」
物価の違いもあるとはいえ、年間4万円以上はかなり高額。それこそラジオしか持っていなくても払う必要があるので、なかなか財布に厳しい制度だ。ちなみにノルウェーでも「年間約4万円」とのことで、税金が高いイメージの北欧はテレビの受信料も高いようだ。
中欧ドイツでは受信料はそこまで高額ではないが、公共放送という立ち位置からその必要性には理解を示す声もある
「生活保護などを受けている場合を除き、一軒あたり月額約2200円を払います。テレビの台数やそもそも持っているかどうかも関係ありません。これらの受信料には公共放送とラジオ番組が含まれます。ただ、学生の場合は免除申請をすることもできる。こういった受信料制度は独立したメディアを守るという意味で必要だと思います。公共放送が企業やコマーシャルに依存したら困るでしょう。税金と一緒に徴収するべきという意見もありますが、その場合、政治からの独立性が失われます。ただ、ドイツでは放送協会が政治家の天下り先になっているという問題もあります」
公共放送の独立性や、政治との距離感……。日本でも決して他人事ではないテーマだ。受信料制度の是非が議論されるとき、こういった面があまりクローズアップされないところも問題なのかもしれない。
また、受信料制度はあるものの支払い率が低く、有料の見放題プランに受信料が含まれる国もあるようだ。
公共放送の受信料が高額で制度も厳格と思われがちな日本だが、欧米の仕組みを見ると必ずともそうとは言い切れないようだ。常にメディアが進歩し続ける現在、こういった制度がいつまで続くかは不明だが、公共放送のあり方も含め、今一度議論するべき価値があるはずだ。
<取材・文/林泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン