「優れた演説が埋もれるのはもったいない」。本より早く枝野演説をWebにアップした人物が語る「国会文字起こし」の意味

優れた演説なのに埋もれるのはもったいない

――我々は一応、「仕事」としてやっているわけなんで、率直に言えば文字起こし面倒だなと思いながらもやらざるを得ないんですが、ただでさえ面倒で避けたい作業ですよね。それに議事録はいずれ公開されるわけで。それでも敢えてやろうと思ったモチベーションはどこから湧いてきたのでしょう? 犬飼:単純に「もったいない」と思ったんですよね。これだけ素晴らしい内容のものが世に触れないでいるのは。しかも、知りたいと思っている人はいるのに、それを得られない。じゃあ自分でやろうかなと思ったのが一つですね。 ――確かに、議事録が出ても多くの人は見ずに埋もれてしまいますからね……。書き起こしをしてみて気がついたことはありますか? 犬飼:まず気づいたのは、枝野さんにしろ西村さんにしろ、長丁場の演説でも理路整然と話しているものは、こちらの勉強にもなるし、ほとんど苦にならないということですね。  特に枝野さんのは原稿がないということで驚きました。20日金曜日に立憲民主党に「この演説を公開する予定はあるのか?」と問い合わせしたんですが、そのときに「原稿などもないので公開予定はありません」と言われたんです。原稿無しであれかと驚きました。文字起こしして、大きな手直しもなしで「読める文章」になっていましたからね。  普通の人は、話し言葉の書き起こしをしただけのものは、読めたものじゃないことが多いと思うんですよ。安倍さんが気の毒なのは、首相だからハードルが上げられてしまう点で、一般の社会人だったら、安倍さんのような話し方をする方は部長さんや社長さんクラスでもザラにいると思うんですよね。人はそんなに原稿無しで流暢に話せはしないものですし。 ――私は先程申し上げたように、YouTubeの自動音声書き起こし機能やGoogleの音声認識などを利用してテキスト抽出するときもあるんですが、議員によって抽出されたテキストが意外とそのまま使えるくらい精度が高い書き起こしになる人と、そうでない人が明確に分かれるということに気付きました。共産党の志位和夫さんとかは、かなり精度高くテキストになってる。 犬飼:発音が明瞭で滑舌がはっきりしている人は書き起こしやすいですね。  あと、話にその人の教養や知性が如実に出るんだなということも気づいたことですね。原稿なしでも理路整然と話す人もいれば、原稿にしがみつかないと何も話せない人もいるというのがわかりますね。書き起こしをしていると、原稿にしがみついているのもある程度わかりますからね。質疑を見ていても聞かれたことに臨機応変に答えていないから答弁にズレが生じてしまうわけで。  その意味で、安倍さんには「信念」がないなと思いました。自分の中に確固たる信念がないから、ああいう時間を引き伸ばしたり同じ内容を繰り返したり原稿にしがみついたりするんだろうなと思いました。  文字起こしとともに犬飼氏の名を一躍広めることとなり、枝野氏が演説の中で触れることになった「信号無視話法」をはじめとする国会可視化について伺ってく次回は近日公開予定。 【犬飼淳氏】 サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」や、7月豪雨時の官邸の対応の遅れについて可視化した「空白の66時間」がSNSで話題に。編集部とは「信号無視話法」の記事のときに当サイトの書き起こしを転載したことが縁でやり取りをすることになった。犬飼淳氏のnote(https://note.mu/jun21101016)、TwitterIDは@jun21101016
TwitterID/@jun21101016 いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。noteのサークルでは読者からのフィードバックや分析のリクエストを受け付け、読者との交流を図っている。また、日英仏3ヶ国語のYouTubeチャンネル(日本語版/ 英語版/ 仏語版)で国会答弁の視覚化を全世界に発信している。
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緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」

不信任案決議の趣旨説明演説をおこなったのが、衆院で野党第一党を占める立憲民主党の代表・枝野幸男議員である。この演説は、その正確さ、その鋭さ、そして格調の高さ、どれをとっても近年の憲政史にのこる名演説といってよいものだ。