とにかく、タイではそれほど出家に大きな意味があるのだ。
少年らの遭難はあくまでも事故であり罪ではないので、亡くなったダイバーの供養で出家するというのはとてもいいことであると見られるのである。
なお、ひとりの少年だけ出家しないのはキリスト教徒だからということのようだ。タイ北部は貧しい地域だったこともあり、欧米の慈善団体が教育や農業の支援を昔から行っている。そのついでなのか、キリスト教の布教も行うため、地方にはクリスチャンも少なからずいる。
では、この少年はタンブンできないのかというとそうでもない。タンブンのために出家した少年たちが代わりに徳を積むということもできる。タイ人は忙しいと、寺に行く人に代わりにお祈りをしておくように頼むのはよくあることだ。こういった代理でもOKのような、ものは言いように見えるおおらかさもまたタイ人の国民性であり、犯罪者をも許すほどのタイ仏教の懐の広さとも言える。
還俗したばかりの高校生。髪も眉も剃るため、社会人だとこの頭でスーツを着てくるので違和感が拭えない
<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:
@NatureNENEAM)>
たかだたねおみ●タイ在住のライター。6月17日に近著『
バンコクアソビ』(イースト・プレス)が発売