無為無策の27時間を過ごした安倍首相と石井国交大臣
高梁川支流の小田川の堤防決壊現場には、「建設省(現・国交省)管理」と刻まれた石碑が倒れていた。カジノ法案を優先した石井啓一国交大臣の職務怠慢でダム異常放流を招き、下流の高梁市と倉敷市真備町地区で大きな被害を出したことは明白だ
「国民の生命財産を守る」が口癖の安倍首相はこの時、すぐに非常災害対策本部を立ち上げて「放水量増加によるダムの貯水量低減」を指示すべきだった。しかし実際には、無為無策の「27時間」を過ごした。気象庁の警報が出てから6時間半後の7月5日20時半、自民党国会議員との飲み会「赤坂自民亭」に出席。21時すぎ、記者に「和気あいあいでよかった」と答えて私邸に戻った。
5日夜の赤坂自民亭への出席をキャンセルしてすぐに非常災害本部を設置、「ダム放水量増加=貯水率低減」を指示していれば、氾濫被害を回避あるいは低減できたに違いない。しかし、非常災害対策本部が設置されたのは警報から66時間後、真備町地区が水没した後の8日8時。リスクを先読みする危機管理能力が皆無に等しいことを露呈したのだ。
しかも安倍首相の号令を受けて、非常災害対策本部で先頭に立つべき石井啓一国交大臣は6日、カジノ実施法案の審議に6時間張りついた。ダム管理の最高責任者である石井大臣も安倍首相と同様、豪雨災害対応に集中する代わりにカジノ法案を優先、豪雨被害低減が可能だった27時間を浪費した。
この安倍首相と石井国交大臣の職務怠慢こそ、西日本豪雨災害を拡大させた原因になったと言っても過言ではない。
初動の遅れ(職務怠慢)による豪雨被害拡大を認めようとしない安倍首相は、日本国民の生命財産を守る重責を担う最高権力者としての資質を欠いているのではないか。今回の西日本豪雨災害を受けて「防災省」創設を提唱している石破茂・元地方創生大臣との差が際立って見える。
<取材・文・撮影/横田一>
ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた
『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他
『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数