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スペインもフランス、イタリアと並んでヨーロッパで歴史あるワインの産地となっているが、そんなスペインのワイン業界を揺るがすような事件が起きている。
7月23日にスペイン各紙が一斉に取り上げて注目を集めたのは、著名ワインを偽造し販売していたグループが逮捕された事件である。
治安警察はこの捜査を「タッグ(Tag)作戦」と名付けて昨年10月から捜査を進めていた。この捜査を開始する動機となったのは、著名ブランドのワインを扱っているある販売業者がネット上で彼らも販売しているワインが不当な価格で売られていることに不審をもち警察に通報したのが捜査の始まりだという。
この犯罪グループはスペインで最高級ワインとして評価されているピングス(Pingus)やベガ・シシリア(Vega Sicilia)などプレミアがつくブランドワインを偽造して販売していたというのである。例えば、ピングスのワインの販売だけで2014年から150万ユーロ(1億9500万円)の利益を稼いでいたというのである。(参照:「
El Pais」)
ピングスのワインはワイン評論家として世界的に著名な米国のロバート・パーカーがビンテージ2014年もの「Pingus 2014」に満点の100点をつけたことで良く知られているワインブランドである。
「El Pais」によると、市場価格で100ユーロ(1万3000円)を越えるピングスのワインを偽造するためにあるワイン生産業者から一本19ユーロ(2470円)のワインを500本/パレット単位で購入して、それにピングスが使っているボトル、ラベル、コルク栓など真似たもので変装させて本物であるかのようにして販売していたという。
ピングスのワインには種類とビンテージによって100ユーロ(1万3000円)を越えるものから2000ユーロ(26万円)近くまである。このグループは偽造ピングスの2004年ものや2006年ものを1000ユーロ(13万円)から、ものによっては最高1900ユーロ(24万7000円)で販売していたという。(参照:「
El Independiente」)
同じく、このグループが偽造に力を入れていたのが、ベガ・シシリアのワインである。例えば、同社のブランド「バルブエナ5番(Valbuena5º)」のワインを市場で100ユーロで購入してピングスと同様に変装させて1400ユーロ(18万2000円)以上の価格で販売していたというのである。(参照:「
Bodeboca」)
因みに、偽造集団が使用した販売価格が19ユーロのワインだが、これも偽造せずとも市場価格は45ユーロ(5800円)くらいになり、高級ワインとして十分に通用するワインである。しかし、ピングスやベガ・シシリアのようなブランドイメージがなくプレミアがつかないのである。
日本市場で1000円前後で販売されているワインはメーカーの出し値は2.5ユーロ(325円)あたりのワインである。スペインでも、このランクのワインが市場の大半を占めている。このクラスになると、中身のワインよりも、ボトル、ラベル、栓のコストの方が相対的に販売価格の中で大きなウエートを占めることになるのだ。