「のびしろ」を数字化することはできるのか?

Elnur / PIXTA(ピクスタ)

「ビジネススキルを高めよう」「リーダーシップスキルを高めよう」ということはよく言われることだ。読者のほとんどの人が言われたことがあるだろうし、これらのスキルを高めたいと思ったことがあるに違いない。しかし、そう言われただけでは、何をどうすればよいかわからないし、そもそもスキルレベルが高いのか、低いのか、よくわからない…ということが実態だ。  そこで、ビジネススキルやリーダーシップスキルの高低を、そのスキルに基づいた行動を実践したか、しなかったかという尺度に置き換えると、スキルレベルの数値化が容易になる。(参照:第92回「コーチング本で学ぶことや知識量」と「知識はなくても実践できている」。どちらが評価されるべき?)  スキルレベルの数値化とともに、数値化が難しいと言われているのが、成長性だ。「のびしろ」があるとかないとか、「成長余力」があるとかないとかというフレーズを口にするビジネスパーソンは少なくない。そして、よく受ける相談が、成長性の高低を個人的な印象で語るのではなく、客観的な数値で捉えることができないかというものだ。  成長性を数値化することができれば、どのスキル領域に注力すれば、スキルが高まりやすいか、高まりにくいかがわかり、自分自身のスキルを高めやすくなるし、短期で高まるだろうスキルと、じっくり時間をかけて高めなければならないスキルの見極めがしやすくなり、スキル開発計画が立てやすくなる。  一方、リーダーの視点からみれば、成長余力が高い人により投資をすることで、人材育成の効果を増大させやすくなり、チームのパフォーマンスを高めやすくなる。 「そんなことができれば苦労しない」「成長性を数値化するなんて簡単にできない」と言う人が少なくないが、実は、難しく考えなければ、成長性の数値化はかなりの程度でできるのだ。その方法とは、スキルレベルの時間軸の変化度合を把握する方法だ。

スキルレベルを時間軸で捉えると成長性がわかる

 例えば、前回挙げた評価シートの質問項目を思い出してほしい。コーチングスキルだとか合意形成スキルだとか個別のスキルに応じて、それぞれ質問1~4に当てはまるごとに1点をつける。当てはまらなければ0点だ。4項目全て当てはまると4点ということになる。 (1) ○○の進め方を知っている (2) ○○を進めることができる (3) ○○を進めたことがある (4) ○○を進めている  定期的にいくつかのスキルについてこの方法で採点し、例えば3か月前と現在との時間軸で点数の変化度合を見れば、増大数が多ければ多いほど、成長性は高いと言えるし、点数が増大していなかったら成長していなかったということになる。  この点数化を、コーチングスキルだけでなく、例えば、会議で合意形成するスキル、プレゼンテーション表現スキル、話法構成スキル、タスク管理スキルなど、いくつかのスキル領域で、実施すれば、成長性が高い領域と、そうでない領域を見極めることができる。  チームメンバー全員でこれを実施すれば、ひとそれぞれ、成長性が高いスキルと、低いスキルが明確になり、他のメンバーに比べて高いか、低いかということがわかる。  時間軸は、3か月でもよいし、6か月でも、12か月でもよい。短期間で成長しやすい人もいれば、ある程度の長い期間をかけて成長しやすい人もいる。一方、2時間とか、1日という短い単位で成長性を図ることもできる。  私は、身に付けたいスキルをパーツ分解してコアスキルを反復演習する能力開発プログラムを実施しているが、2時間の演習の最初と最後でスキルチェックをすると、2時間という時間軸での成長度合が数値化できる。
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成長度合いの判定は自己判定で十分
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チームを動かすファシリテーションのドリル

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