はあちゅうさんの事実婚にみる、高学歴女性が求める「結婚の法則」<北条かや>

今や、結婚のスタイルもライフスタイルに合わせてカジュアルに選べる時代。事実婚をするメリットとは……?

北条かやの「炎上したくないのは、やまやまですが」【その32】

 ブロガーで作家のはあちゅうさんが、AV男優のしみけんさんとの事実婚を発表した。  稀代のビッグカップルの誕生に「事実婚」という新しそうなネーミングが組み合わさって、ネットは湧いた。  が、中には「事実婚って複雑な事情があるんでしょう」とか、「夫婦別姓にこだわる人のための制度でしょう」などの一面的な理解も広まっているように思う。  制度というのは、知らない人は知らないが、知っている人はものすごく沢山調べてその仕組みを選ぶものである。  はあちゅうさんはなぜ法律婚ではなく事実婚を選んだのか語らないし、無理に語る必要もないと思うが、私はなんとなく彼女の気持ちが分かる気がする(僭越ながらですが……)。  というのも私も以前、パートナーとの事実婚を検討したことがあるからだ。もうずいぶん前に結婚を考えた相手がいたが、どうしても相手の名字に揃えて「嫁になる」という感覚が理解できなかった。  そんなとき、憧れの作家が事実婚をしていると知り、あれこれ調べるうちに世の中には意外と事実婚カップルが多いのだと分かった。そのメリットとデメリットはよく承知していたつもりだ。  ありがたいことに当時のパートナーは私の感覚を尊重してくれたが、まだ20代前半で若かったのもあり、男性側の親がなかなか理解してくれなかった。  仕方あるまい。昭和育ちの親が、「将来は孫を」と期待して育てた長男。その嫁になろうという人物がいきなり「夫婦別姓がいい」とか「子供はあまり考えていないので、しばらくは事実婚という選択肢もある」と言い出したのだから、さっぱり意味が分からなかったと思う。  意見は折り合わなかった。こればっかりは生理的な直感というか、私が「嫁に入る」という感覚、本家のために孫を生まなければという義務感が理解できないのと同じように、相手の親も、「嫁」が結婚に際して新しいやり方を主張するなんて直感的に理解不能だったのだろう。  私は当時、社会人になって仕事をバリバリやろうと思っていた。誰かに養われるなんてまっぴらごめんだ。家同士の結びつきはそこまで必要ないし、法律婚にするとますます孫を期待される気がする。でもパートナーとの継続的な関係は欲しい。  わがままと言われればそれまでだが、事実婚はこういう場合にぴったりだった。相手の扶養には入れないので税制上のメリットはないが、「依存し合うのは愛情面のみで、金銭的には自立している」生活に憧れを抱いた。  お互いに収入があるカップルにとって、扶養控除や第3号被保険者制度はいらない。  もし子供がほしいとなった場合、子の姓と認知をどうするかという問題もあるが、子が産まれた瞬間に籍を入れてすぐに離婚すれば、何かと差別されがちな「非嫡出子」にはならないのであまり問題はない。  はあちゅうさんも、もしかしたらそういう思いが少しでもあったのかなと想像する。
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高学歴女性は結婚に「保存」を求める
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