はあちゅうさんの事実婚にみる、高学歴女性が求める「結婚の法則」<北条かや>

高学歴女性は結婚に「保存」を求める

 心理学者の小倉千加子さんは『結婚の条件』(2007、朝日新聞社)という本の中で、首都圏に住む39歳までの独身女性、約50名にインタビューした結果、「結婚の条件は女性の学歴に応じて生存→依存→保存と変化する」と述べている。  高卒女性にとって、結婚は今後生きていくための「生存」手段としてみなされていた。自分の収入が少ないので、生活していくために結婚するのである。  一方、短大卒者は高卒者よりもやや可処分所得が多く、結婚によって生活レベルを下げることは考えられない。が、今の仕事を続けるつもりもなく、専業主婦になりたがり、結婚相手に「依存」したいと願う。  大卒で専門職についた女性が求めるのは「保存」だ。ライフスタイルが確立した彼女たちは、自分の人生が結婚によって変わることをもっとも危惧する。結婚に求めるのは「保存」で、自分の生活をおびやかさず、尊重してくれて、愛してくれる男性がよい。家事育児能力があれば理想的だ。  女性の結婚観が学歴ごとに「生存、依存、保存」と変わっていくという小倉の分析は2007年のもので、かなり古いが、今でもある程度当てはまると思う。  はあちゅうさんは高学歴で、自立し、専門的な仕事をもっている。結婚で大きくライフスタイルを変える必要がないというか、むしろそれがデメリットになるので、結婚に「保存」を求めたのではないか。事実婚なら、法律婚よりも今の生活の変化度合いが少なく、「保存」レベルが高い。  仕事に喜びを見出す女性が「ライフスタイルの保存」を求めるのは当然で、彼女の選択はとてもよく分かる。事実婚という選択肢を見つけた彼女を責めるアンチはただ想像力が欠如しているだけだろう。  さて私自身はといえば、先述の男性とは結局、事実婚もできずに終わり、別の男性と法律婚した後に最低な離婚をした。  法律婚をしてしまうと、おそろしいほどの相互責任が生じてなかなか離婚できない。もちろん夫と同じ名字にした喜びはあったが(ただ初めての経験に浮かれていただけかもしれない)、結局それが互いに妙な一体感と依存感覚を生んでしまい、離婚のときに苦労した。  なので、パートナーシップにおける幸せと制度上の問題が大きく関わっていることだけは身を持って分かる。  制度が人間を作るというのはあながち間違っていないし、自分が結婚制度に何を期待するかハッキリさせておくと、人生観が定まるので良いことだと思う。  はあちゅうさん、本当におめでとう。 <文:北条かや> 【北条かや】石川県出身。同志社大学社会学部卒業、京都大学大学院文学部研究科修士課程修了。自らのキャバクラ勤務経験をもとにした初著書『キャバ嬢の社会学』(星海社新書)で注目される。以後、執筆活動からTOKYO MX『モーニングCROSS』などのメディア出演まで、幅広く活躍。著書は『整形した女は幸せになっているのか』(星海社新書)、『本当は結婚したくないのだ症候群』(青春出版社)、『こじらせ女子の日常』(宝島社)。最新刊は『インターネットで死ぬということ』(イースト・プレス)。 公式ブログは「コスプレで女やってますけど
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