死者50人を出した倉敷市真備地区の被害の要因!? 高梁川上流・河本ダムの「異常放水」

ダムが有効なのは上流域の大雨だけで、下流域には無力

ハザードマップで「水没危険区域」となっていた倉敷市真備地区の、決壊した堤防。危険が指摘されていたにもかかわらず、堤防整備が進んでいなかった疑いがもたれている

 嘉田由紀子・前滋賀県知事は呆れていた。「日本は水害常襲国家でありながら、きちんとした対策を打たずに真備地区で50人の方が亡くなった。『日本は文明国なのか』と言いたくなります」。  嶋津氏も、「鬼怒川上流の『湯西川ダム訴訟』で警告を発していたことが、実際に起きてしまった。堤防が決壊した2015年9月の鬼怒川水害のことです」と、聞く耳を持ってこなかった国交省の対応に怒りを露にしていた。  鬼怒川水系の上流には川俣ダム・川治ダム・五十里ダム・湯西川ダムがあり、その一つである湯西川ダム建設の必要性をめぐって裁判が起こされており、2008年に嶋津氏は証言台に立ち、「巨額の河川予算が投じられている湯西川ダムを中止、その予算で鬼怒川下流部の河道整備をすみやかに進めるべき」と訴えていた。しかし、裁判所も国交省もダム建設を見直すことはなかった。 「ダムが有効なのは上流域に大雨が降った場合で、下流域の大雨には無力。それなのに国は膨大な予算をかけて、鬼怒川水系の湯西川ダムをはじめ全国各地で整備を続けている。鬼怒川水害は、効果が乏しくて高価で時間もかかるダムを優先した河川行政が招いた“人災”といえます」(嶋津氏)  歴代自民党政権と二人三脚でダム優先の河川政策を続けてきた国交省こそ、西日本豪雨災害の要因を作ったのではないか。岡山県でも鬼怒川水系と同じように、治水効果が限定的なダムが次々と建設されている。先の「高梁川ダム統合管理事務所」のホームページを見ると、「河本ダム」以外にも「高瀬川ダム」「千屋ダム」「三室川ダム」などのダムがあることが紹介されていた。

自治体土木部は国交省の“植民地状態”になっている

真備町の被害その2

まるで津波の被害のような真備地区の状況。これは、ダム優先の河川行政による“人災”ではないのか

「地方自治体の土木部は国交省の“植民地状態”になっています。そのため、全国各地で同じようにダム建設が進んできたのです」と知事時代の実体験を語るのは嘉田前知事。 「滋賀県の土木部もそうでしたが、各県の土木部長は国交省からの出向官僚の“指定席”。私が知事の時代は、ダムありきの河川政策から転換しようとする方針に出向官僚が抵抗したため、生え抜きの県職員に代わってもらいました。これは全国的に異例のことで、かなりたいへんなことでした」(嘉田前知事)。 ※嘉田県政の継承を掲げて2014年7月の滋賀県知事選に出馬、自公推薦候補を破って当選した三日月大造・現滋賀県知事(今年6月の県知事選で再選)は、土木部長ポストを国交官僚に再び譲り渡し、河川政策もダム建設優先の方向に舵を切った。「4年後の知事選で自民党と“手打ち”をして対立候補擁立を回避するため、ダムありきの河川政策を受け入れた」と見られている。  愛媛県も状況は同じだ。愛媛県大洲市で山鳥坂ダム建設に反対してきた有友正本氏はこう話す。 「いま山鳥坂ダム建設が進んでいますが、もっと早期に安価でできる治水対策を進めるべきでした。川底の土砂をさらって移動する『河床の掘削』『堤防強化』『宅地の嵩上げ(高台化)』をやるべきだ、と市や県や国交省に要請しても動いてこなかった。まさに“人災”です」  西日本豪雨災害で甚大な被害を出した今こそ「ダム放水起因説」を徹底的に検証したうえで、歴代自民党政権と国交省が二人三脚で続けてきた「ダム建設優先で堤防強化が後回し」の河川政策を転換すべきではないか。  それと同時に「人災の可能性が高い」という結論が出れば、倉敷市真備地区の被害に対しては国家賠償対象となるのは当然だ。再発防止と被災者救済の意味でも、“ダム放水起因説”の徹底的な検証、ひいては戦後の河川政策の総括は不可欠だ。 <取材・文・撮影/横田一> ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
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