欧州最大の利用客数を誇るライアン航空、ブラックな労働環境が災いして欧州全域600便キャンセルの大規模ストへ

ライアン航空の75%の社員が時間給の契約社員

 ストを決行する理由は労働条件の改善である。これまで客室乗務員は出身国の労働基準に則って雇用されているのではなく、ライアン航空の本社があるアイルランドの労働基準によって雇用されている。組合側では客室乗務員の出身国の労働基準に合わせることを要求している。しかも正社員ではなく契約社員ということで、基本給は存在せず、時間給になっている。その為、職が安定しておらず、収入についても観光シーズンになるとフライト便が増えて収入は増えるが、シーズンオフになるとフライト便が減少することによって彼らの収入も減少することになる。社員の75%がこのような形で雇用されているという。  一方、会社側は客室乗務員の中には年間で最高4万ユーロ(520万円)稼ぐ人もいて、労働時間は週労5日制に匹敵し、年間で900時間以上のフライト勤務はできないとしており、機内での販売の売上に対し10%の報酬もあるとして会社側は彼らを酷使していないと主張している。だから組合側の要求は意味のないものだとしている。(参照:「Expansion」、「Cinco Dias」)

欧州の空路は混乱必至

 スペイン政府はこのストによる影響を最小限に留めようとしているが、スペインから1800人が客室乗務員として雇用されているにも拘らず、彼らがアイルランドの労働基準で契約されているために、スペインの労働基準で規定されている最低限のサービスを守る義務を突きつけてライアン航空側に譲歩を迫れないでいる。その為、この2日間のストの影響は予想されている以上に利用客に悪影響を与える可能性があると見られている。(参照:「El Pais」)  今回のストに備え欧州航空安全局は、サービス面においていつも不備が目立つライアン航空に対し7月5日付で、フライトに遅れ又はキャンセルが発生した場合は、乗客に充分な情報の提供、手助け、チケット料金の返却、代替え便の用意などを実行するように喚起した。(参照:「Expansion」)  創設から僅か30年余りで、ヨーロッパで最大の利用客数を持つ航空会社に成長したライアン航空であるが、チケットをどこよりも安い料金で提供することを信条としている同航空のその犠牲になっているのが、パイロット、客室乗務員、地上勤務員など従業員である。 <文/白石和幸> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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