肝炎大国中国、画期的な新薬登場で根強く残る肝炎キャリアへの偏見は減るか?

健康情報は保守的な傾向 

 今や世界2位の経済大国となった中国は、情報が統制されているとはいえ、インターネットで検索すれば正しい知識、情報を得ることが容易だ。にもかかわらず、なぜこのような迷信にも近いような話を簡単に信じ込み、偏見を持ってしまうのか。中国の教育事情に詳しい専門家によると、自分の頭で考えさせない詰め込み型の教育や家庭内教育の要因が大きいとの見方を示す。  また、こんな要因もある。13、4年前、著者が中国の会社で働いているときに中国人の同僚にコーヒーを勧めると、「コーヒーは体に悪いから飲まない」という。日本でもカフェインの中毒性やステインによって歯が変色するなどの理由でコーヒーを口にしない人はいるので、どんな理由か聞いてみると、母親からコーヒーは体に悪いと聞いたからというものだった。今や上海でもハルビンでも中国各地に「スターバックスコーヒー」など大衆向けのカフェチェーン店が立ち並び、「マクドナルド」のマックカフェも当たり前に飲むことができる状況からすると信じられないかもしれないが、中国では、ほんの十数年前まで、コーヒーを飲む人はごく一握りで、高級志向な喫茶店しかなく、5つ星ホテルのカフェでもインスタントのスティックコーヒーが出てきたようなコーヒー後進国だったのだ。  地域差はあるが、中国人は基本的に保守的で、親や親戚が言ったことを自分で調べることなく信じ込む人も少なくなく、先ほどのコーヒーは不健康と言った母親も誰かに聞いた話をそのまま鵜呑みにしたものと思われる。その元同僚が今どうなっているのか定かではないが、もしかすると当時が嘘のようにコーヒー好きに変貌しているかもしれない。そのくらい現代中国人の価値観は、短期間で180度コロリと変わる……という点もまたあるのだ。  今回のB型肝炎の新薬登場で中国の肝炎で苦しむ人たちを取り巻く状況や信じ込まれている思い込みも180度ガラリと変わるくらい好転することを願ってやまない。 <取材・文・撮影/我妻伊都(Twitter ID:@Ito_Wagatsuma)>
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