「より働かない」が次の時代の要請。「働き方改革」はそれに逆行する、経済界のための「働かせ方改革」

「あまり稼がない」と決めて、逆張りで生きていこう

ダウンシフターズ

働き過ぎず、稼ぎすぎない生き方を実践してきた、筆者の著書『減速して自由に生きる ダウンシフターズ』(ちくま文庫)

 働いて稼ぎたい人も、あまり働きたくないけど稼ぎたい人も、これからますます給料が上がりづらくなるし、多くの人の年収が減る時代になる。そんな世の中にはしたくなかった。  こういうカラクリをくわだてている経済界と政界の動きはずっと丸見えだった。でも、「そりゃオカシイでしょ」と考える人々の行動でなんとか食い止めてきたが、とうとう押し切られてしまった。  ならば、最初から「あまり稼がない」と決めて、逆張りで生きればいい。しかも、稼いでいる奴らより、安心で美味しいものを食べて、時間もあって、人間らしい暮らしをする。そのためには、コンクリートに覆われて人が密集する都会より、水と緑が豊かで、人が適度な数のローカルこそふさわしい。  まったく働かない、まったく稼がない、ガマンして貧しい暮らしをしよう、などと言っているのではない。働きすぎず、あまり稼がないで、でも豊かな暮らしをしようじゃないか。  そう思って、週休3日の小さなバーを営み、休みにはお米をはじめとした自分の食べ物を楽しみながら半自給してきた。買うんじゃなくて「自分でカッコよく創る」ことを増やしてきた。そしてとうとう、この3月に店も閉じて、羽を広げてローカルに飛んで来てしまったわけだ。  当店にかつて来てくれた面々から、「働く時間を自らの意思で減らした」という連絡が届くことが多い。家族との時間のために休みを増やした豆腐屋さん、米や野菜を自給するために休みを増やしたスイーツ屋さん、美容院や居酒屋だって休みを増やしたという方々も。  保育の仕事を週2~3日に減らす交渉をしてヨガを教え始めた20代女性、忙しさを理由に弁護士の仕事を減らして心のあり方のカウンセリング始めた40代女性、会社を辞めて必要な分だけ元会社から仕事を受けるようにして他にも小さななりわいを作り始めた40代男性、会社にいながら週休3日をかけあって実現した30代男性などなど。  俺はそういう人たちを「ダウンシフターズ」と呼び、ダウンシフトして愉快に生きようぜ、と言い続けてきた。価値観の転換で収入が減ったって幸せだし、逆に収入が増えるケースだってある。

毎日働くほうがヘン!「経済ほどほど、人は豊かに」

 そもそも、月曜日から金曜日まで9時~17時で働くとか、天気や季節や繁忙閑散に関係なく1年中まんべんなく働くとか、そんな“常識”は思い込みだ。いや、カラクリにあてはめられたか。気候や天候など、人類は自然のリズムに合わせて生きてきた。むしろ、毎日朝から晩まで働くというほうが、人類の存続を今後ますます危うくしてゆく。異常気象もそうだ。豪雨も土砂災害もそうだ。  時代の要請とはいえ、人類が過分に経済を大きくしてきたことが、地球温暖化や格差拡大などさまざまな問題を引き起こしている。さらに困ったことには、時代の要請が終わったのに、いまだに経済を大きくしようとして無謀で無駄なことばかりしている。それが一番の原因だ。 「経済栄えて、人は滅びる」なんてまっぴら。「経済ほどほど、人は豊かに」を足元からクリエイトしていこう。一歩踏み出す小さな勇気、あなたもいかが? 【たまTSUKI物語 第4回】 <文/髙坂勝> 1970年生まれ。30歳で大手企業を退社、1人で営む小さなオーガニックバーを開店。今年3月に閉店し、現在は千葉県匝瑳市で「脱会社・脱消費・脱東京」をテーマに、さまざまな試みを行っている。著書に『次の時代を、先に生きる~まだ成長しなければ、ダメだと思っている君へ』(ワニブックス)など。
30歳で脱サラ。国内国外をさすらったのち、池袋の片隅で1人営むOrganic Bar「たまにはTSUKIでも眺めましょ」(通称:たまTSUKI) を週4営業、世間からは「退職者量産Bar」と呼ばれる。休みの日には千葉県匝瑳市で NPO「SOSA PROJECT」を創設して米作りや移住斡旋など地域おこしに取り組む。Barはオリンピックを前に15年目に「卒」業。現在は匝瑳市から「ナリワイ」「半農半X」「脱会社・脱消費・脱東京」「脱・経済成長」をテーマに活動する。(株)Re代表、関東学院経済学部非常勤講師、著書に『次の時代を先に生きる』『減速して自由に生きる』(ともにちくま文庫)など。
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