ゴミ屋敷の中に佇んでいた美女。便器には大便があふれ……<競売事例から見える世界8>

開かずのドアの向こう側に佇んでいたのは……

 執行官がドアを開けると、そこには驚いた様子のOL風美女が佇んでいた。  正確に言うとある程度の空間がある室内に呆然と立ち尽くしていたのではなく、そこにしか人が存在できるスペースが無かった。  いわゆるゴミ屋敷。洋服や弁当のカスにペットボトルが大半のようでセルフネグレクトが疑われる。  執行官が事情を説明するとようやく事態が飲み込めたようで、「散らかってるので……」と呼びかけに応じなかった理由について語った。  残念ながらこのような状況になってしまうと、片付けや申し開きをする間もなく、現況確認と物件内部写真の撮影が行われることになる。  ゴミ屋敷にも幾つかのパターンがあり今回もセルフネグレクト的なものかと思われてはいたのだが、彼女の場合はいずれにも当てはめにくい部分があった。  臭気の酷いユニットバスの扉を開くと、トイレには何回分かの見当もつかないほど大量の大便が溜め込まれていたのだ。  この状況を執行官も心配した様子で少し話を聞いてみると、人とのコミュニケーションがうまくとれず、離職と求職を繰り返すストレスのうちにいつしかこうなってしまったのだとか。 「美人の人生はイージーモード」  このような言葉が安易に語られがちだが、美しい容姿容貌を持つもの全てが恵まれた強者というわけではない。  彼女たちの中にも何らかの歯車の掛け違いから社会に馴染めず、イージーモードどころか“ベリーハードモード”な人生を歩むものも少なくない。  我々はいつからか弱者にすら「弱者としての理想像」を求め、押し付けてはいないだろうか。  弱者とすら認識されない弱き者たちのSOSは、どこへ向けて発せられるべきなのだろうか。 【ニポポ(from トンガリキッズ)】 ライターの傍ら、債務者の不動産を競売にかける『不動産執行』のサポートも行う。2005年トンガリキッズのメンバーとしてスーパーマリオブラザーズ楽曲をフィーチャーした「B-dash!」のスマッシュヒットで40万枚以上のセールスとプラチナディスクを受賞。また、北朝鮮やカルト教団施設などの潜入ルポ、昭和グッズ、珍品コレクションを披露するイベント、週刊誌やWeb媒体での執筆活動、動画配信でも精力的に活動中。Twitter:@tongarikids。オフィシャルブログ:団塊ジュニアランド!。動画サイト:超ニポポの怪しい動画ワールド!
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