タイの洞窟事故、イーロン・マスクの「小型潜水艦」は使われなかったが、迅速な行動力と無駄には終わらせないアイデアに驚愕

 6月23日にタイで発生した洞窟事故。行方不明になった地元のサッカー少年とそのコーチら13人はその後、洞窟の奥深くで無事に発見され、10日までに13人全員が救出された。
小型潜水艦

マスク氏がタイの洞窟事故の救出用に開発した、小型潜水艦 (C) Elon Musk

 しかし、その救出にはさまざまな困難が立ちふさがったのもまた事実で、8日には救助活動をしていたダイバーが一人亡くなっている。  そんな困難な救助活動に協力を名乗り出ていたのが、実業家のイーロン・マスク氏。自身が率いる宇宙企業スペースXやトンネル掘削会社ザ・ボーリング・カンパニーの従業員らとともに、ロケットの部品を使った超小型潜水艦を開発していた。  今回は使われずに無事救助活動が終わったが、果たしてイーロン・マスク氏の秘密兵器、いかなるものだったのか?

狭く水で満たされた洞窟

 英国BBCなどの報道によると、この事故は2018年6月23日、タイ北部のチェンライにあるタムルアン洞窟で起きた。  この日、地元のサッカー少年とそのコーチら13人が洞窟を訪れ、中に進入。この洞窟は現地でも有名であり、彼らも2年前に訪れたことがあったという。  しかし、いまの時期は雨季にあたり、現地は大雨に見舞われていた。彼らが入ったときにはなんともなかったようだが、やがて洞窟内に雨が流れ込み、一部が水没。彼らは閉じ込められてしまった。  その後、タイの救助隊や世界各国からボランティアでやってきたダイバーらの決死の捜索活動により、7月2日には13人全員が、洞窟の奥深くで生存していることが確認された。  しかし、次の問題は彼らをどう救出するかだった。彼らがいる場所は入り口から約5kmと遠く、また洞窟内は依然として多くの箇所が水没していること、さらに洞窟内には人ひとりがやっと通れるくらいの狭い箇所もあり、プロのダイバーでも片道5時間ほどかかるうえに、多くの危険が伴うという。先述したように6日には救出活動に当たっていた元タイ海軍のダイバー1人が亡くなる事故も起きている。  遭難した子どもたちにはダイビングの経験がなく、体力が落ちていることもあって、すぐの救出は困難だとされた。  一方で救出までの時間が長引くと、彼らの健康状態が悪化したり、さらなる雨によって救助がさらに難しくなる可能性もあった。

立ち上がったイーロン・マスク氏

 世界が注目するこの事故に、7月4日、実業家のイーロン・マスク氏がTwitterで協力を表明した。  マスク氏は、自身が率いる宇宙企業スペースX(SpaceX)や、トンネル掘削会社ザ・ボーリング・カンパニー(The Boring Company)、電気自動車メーカーのテスラ(Tesla)がもつ技術が、事故状況の把握や救出に役立つかもしれないとつぶやいた。  たとえばザ・ボーリング・カンパニーは、地中の様子を調べるための高性能なレーダーを保有しており、詳しい状況を把握したり救出計画を立てたりすることができる。また、トンネル掘削の技術を使えば、洞窟内の狭くなっている場所を広げられるかもしれない。さらにテスラのバッテリーを現地の電力源にし、水を排出するポンプなどに使えるかもしれない、と語った。  マスク氏はすぐさま、スペースXとザ・ボーリング・カンパニーの技術者を現地に派遣。タイ政府や現地の救助隊と意見交換するなどした結果、8日には「小さなカプセルに彼らを入れて運び出すのが一番安全な方法かもしれない」という見解を明らかにした。  そして早くもその翌日には、そのカプセルの画像を投稿。マスク氏は「小型の潜水艦」(Mini-Sub)と表現した。わずか1日かそこらで造り上げたことに対して、驚きと称賛の声が多く寄せられた。  この潜水艦は、スペースXの「ファルコン9」ロケットに使っている、液体酸素をタンクからエンジンまで流す配管を流用したもので、大きさは子ども一人がやっと入れるくらい。もちろん中は人が呼吸できるようになっており、頭部部分には窓もある。  潜水艦の先端には長いケーブルがあり、また外側のいたるところに取っ手もあり、ダイバーがつかんで運べるようになっている。現地のダイバーとの検討から、洞窟内のすべての箇所を通過できることも確認したという。  日本時間9日の朝の時点で、マスク氏はプールを使って試験や訓練を実施し、ひととおり成功したことを明らかにしている。
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使われなくても無駄にはしない
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