飛行機で農薬を撒く、大規模プランテーション農業。こうした農業から脱しようという動きが世界中で起きている 写真/時事通信社
これまで日本の多様な品種を守ってきた「種子法」が廃止され、日本の農業は大きな転換点に差しかかっている。そんななか、「多様な品種・種子を守る」ためのさまざまな動きが起きている。
現在、南米各国やアフリカでは、農薬・化学肥料を用いて工業化された農業に対し、小規模・家族経営の農家による生態系の力を活用した農業や食のあり方が
「アグロエコロジー」として力を持ちつつある。
「例えばブラジルでは、地域の食が壊されて安い加工食品による糖尿病の急増が大きな問題になっており、農薬も化学肥料も使わない有機農業が注目されています」と解説してくれるのは「日本の種子を守る会」事務局アドバイザーの印鑰智哉さんだ。
「こういった動きは急激に世界に広がりつつあり、日本の有機農業の割合はまだ1%ほどですが、
7%のドイツは数年のうちに3倍にする計画ですし、
アメリカでも毎年10%以上成長しています。有機農業の割合の高いキューバやロシアは、有機家庭菜園も盛んです」
一方、綿生産が
モンサントの遺伝子組み換え種子に席巻されたインドでは、22州に124以上の
シードバンクが作られた。実のところ、遺伝子組み換え種子の特許を認めている国は少数だ。’80年に連邦最高裁が種の特許を認めたアメリカでは、「この20年で慢性疾患が急増し、平均寿命の伸びが止まる傾向」だという。
「タンパク質が低下したアメリカの大豆を、中国は輸入しません。
モンサントは除草剤の使いすぎで耐性のある雑草が出てきてしまい、別の農薬を混ぜています。世界最大の育種企業であるモンサントを支えた柱は今、折れそうです」
種子法を廃止する日本の動きは、工業的な農業が見直されつつある世界の趨勢に逆行している愚行なのだ。
<取材・文/宗像充 横田一>
― いよいよ[日本の種]がヤバい! ―