貿易戦争の激化はどこの国にもメリットなし。場合によっては1ドル80円台時代の再来も!?

報復関税合戦でアメリカの消費が冷え込むのは必至

 問題は、いずれの国にもデメリットしかないことです。まず、あらゆる国で輸出が減少します。なかでも、影響が大きいのは中国。トランプ政権は4月に米通商法301条に基づく知的財産権侵害に対抗する制裁措置として、中国のハイテク製品に対して25%の関税引き上げを行うと発表しました。関税の対象額は5兆円超。これに反発して中国が報復関税を発表すると、アメリカは「10兆円の追加関税も検討」と揺さぶりをかけています。6月段階で両国の関税発動時期は明らかにされていませんが、アメリカの対中輸出額が20兆円超なのに対して、中国の対米輸出額は50兆円を大幅に上回ります。報復合戦が続くほど、中国が立ち行かなくなってくるのです。  アメリカにとっても輸入品は関税分だけ高くなり、一方で競争力を失った米国企業まで生き残るため人件費が増加し、結局はインフレになってしまいます。そうなるとFRB(連邦準備制度理事会)はさらなる利上げが必要となるはずですが、今度は米国経済が金利高に耐えられなくなり、またドル建て債務の多い新興国経済はもっと混乱してしまいます。結局、FRBはどこかで利上げ終了あるいはペースの減速を迫られ、急激なドル安に見舞われることになります。トランプと同じく米国第一主義を掲げたレーガン政権時にはプラザ合意というドル安政策で、1ドル=260円から120円まで下落しました。現在に当てはめるとトランプ政権の1期目が終了する’20年には80円台になっているような気がします。  実際、外国人投資家は金利のつかない日本の長期国債を’17年だけで10兆円以上も買い越しています。この数字は先物を含めた日本株の買い越し額の5倍。貿易戦争後のドル安トレンドを先回りしているようにも見えるわけです。 【闇株新聞】 ’10年創刊。大手証券でトレーディングや私募ファイナンスの斡旋、企業再生などに携わった後、独立。証券時代の経験を生かして記事を執筆し、金融関係者・経済記者などから注目を集めることに。現在、新著を執筆中 photo by Michael Vadon via flickr (CC BY-SA 2.0) ― 2018年後半戦を読み解く4大経済ニュース ―
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