公道で取材活動を行っていると教団職員が寄ってきた
今年3月、
東京都迷惑防止条例が改正された。住居等の付近を「
みだりにうろつく」行為等が新たに様々な禁止行為が追加され、罰則も強化されたため、
市民運動や取材活動を規制することもできる危険があるとして批判を浴びた。この条例が7月1日に施行された。果たして、新たな条例は本当に市民運動や取材活動の障害になるのか。東京・白金にある幸福の科学教祖・大川隆法総裁の住居付近で、ジャーナリスト4名が取材を試みた。
有名女子校や小学校が建ち著名人も住む、白金の閑静な住宅街。そのなかに、白壁に金ピカの巨大な仏像などが鎮座する建造物が、異様な存在感を放っている。「
大悟館(教祖殿)」。教祖・大川隆法総裁の住居として使用されている、宗教法人幸福の科学の施設だ。
閑静な住宅街に独特な存在感を放つ「大悟館(教祖殿)」
幸福の科学は昨年10月から、公道から大悟館を撮影する筆者やほかのジャーナリストなどの取材を妨害してきた。大悟館にカメラを向けると、教団職員らが退去して詰めかけカメラの前に立ちはだかったり、手やプラカードをかざしたりして邪魔をする。大声を出したり取り囲んで威圧したりもする。その様子をネット上で公開すると「肖像権の侵害だ」とクレームをつける。
取材者を睨みつける教団職員
今年3月に都条例の改正案が都議会で可決されると、
禁止行為として新たに追加された住居等の付近を「みだりにうろつく」行為に当たるとして、筆者に対して抗議書を送付してきた。そこで
改正条例施行日の7月1日に大悟館前の行動に取材に行ったらどうなるのかという検証を行うのが、今回の取材の目的だった。
7月1日、4人のジャーナリストが大悟館前に近づくと、すでに数人の職員が待ち構える。何人かはカメラをこちらに向けて撮影している。もちろん、ジャーナリストの側も撮影している。
「やめてください」
「取材はお受けしません」
「迷惑です」
「お帰り下さい」
口々に抗議しながら、撮影中とわかっているカメラの前に自ら写り込んで、取材を妨害する。いつの間にか教団職員らの数は10人ほどに膨れ上がっていた。
ジャーナリストたちは公道から大悟館を撮影しようとしただけ。しかし、それだけのことに対して大量の教団職員らが妨害するため、その様子が取材対象になってしまった。教団側が騒げば騒ぐほど、ジャーナリストたちはそれを取材する。
もともと騒ぎになる要素は何もないのだが。
大悟館の表側での取材を終えた一行は、裏手に回る。裏側の外壁には、これまた巨大なヘルメス像が天を指さしている。
大悟館の裏側でも、また教団職員らが立ちはだかる。ジャーナリストたちとの押し問答が続いた。
ところが、そのうち年配の職員が若い職員らに、こんな声をかけた。
「もういいよ。これ単なる迷惑行為だよ」
そう言って職員たちを促し、その場を後にしようとする。筆者は思わずツッコミを入れてしまった。
「ちょっと待って。単なる迷惑行為だと引き上げるんだ。取材だと邪魔をするの? おかしくないそれ?」
結局、職員らは全員引き上げ、その後、ジャーナリストたちは大悟館の表側に周り、誰にも邪魔されず存分に建物の外観を撮影することができた。だったら、職員たちは一体何のためにあんなにたくさん出てきたのだろう。
取材は30~40分ほどで終了した。