東京都迷惑防止条例施行初日、条例巡りジャーナリストらが幸福の科学施設前で大揉め

新条例施行でも警察は取り締まらなかったが……

 7月1日に取材を行うことは、ネット上で事前に予告していた。幸福の科学は筆者が住む地元の警察署と、大悟館の所轄である高輪署に「相談」。2つの警察署から筆者に対して連絡が入った。  しかし取材を行わないようにとの要請はなし。違法行為のないように注意してほしいという内容にとどまった。当日は警察も現場に来るという。  迷惑防止条例の条文では、つきまとい行為等について「正当な理由なく」という条件がついている。また「都民の権利を不当に侵害しないよう留意し、(略)濫用するようなことがあってはならない」とも定めている。普通に考えれば市民運動や取材活動は規制対象にならない。この条例が批判されている理由は、何が正当な理由であるのか条文が具体的ではないため、警察などによる恣意的解釈も可能だという点にある。権力側にとってなにか都合が悪い事情があれば、市民運動や取材活動を規制することもできてしまう、という批判だ。  しかし少なくとも今回のケースでは、警察は事前に「取材」を正当な理由とみなした。当日の現場でも、警察官が条例違反の可能性を口にしてジャーナリストらの公道を抑制する場面は一切なかった。ある警察官は、筆者にこんなことを教えてくれた。 「条例が禁じているつきまとい行為は、反復性がある場合です。繰り返して初めて違反になる。住居付近をみだりにうろつくという項目は7月1日に施行される改正条例から追加されたものなので、その回数は施行日から数えるんです。ですから、仮に禁止行為であると解釈された場合であったとしても、1回目である今回、警察が摘発することはない」  この点は幸福の科学もわかっていたようだ。現場では、大悟館の表側の取材を終えたジャーナリストたちが裏側に回って取材を行った際、教団職員がこう言い放った。 「これ、2回目ですよね」  つまり、反復しただろうと言いたいわけだ。  後日、幸福の科学が被害届を出すなどした場合はどうなるかわからないが、今のところ警察による条例の濫用や拡大解釈はない。その点では、一安心だ。  しかし、今後それが起こらないという保証にはならない。条文上は恣意的運用も可能であることに変わりはないし、条例が施行されて時間が立てば「反復」とみなされるケースも増えるだろう。引き続き、条例の運用について監視する必要がある。  また、警察が動かなくても、私人が条文を悪用し気に食わない相手に不当な圧力をかけるという形での濫用はすでに起こっている。今回の幸福の科学がやったことが、それだ。  言うまでもなく公道は幸福の科学が所有、管理するものではない。往来は自由だし、個人のプライバシーに関わるようなものは別として、公道から見える範囲で建物などを撮影する取材も自由だ。教団の許可を取る必要もない。そんな当たり前のことが、白金のこの施設の前の公道ではできない。  幸福の科学は、沖縄の基地反対運動を暴力的だの何だのと非難している。しかし当の幸福の科学自身が、公道での取材活動を実力行使で妨害し学生を恫喝し、自由な取材や報道をさせないよう圧力をかけているのだ。  今回、筆者たちは新条例を盾にした教団からの圧力を相手にしなかった。しかし、これが一般市民だったらどうだろう。問題を起こした政治家や官僚などへの抗議活動をしようという時、彼らから「デモを行えば迷惑防止条例違反で刑事告訴する」と予告されたとしたら、それでも一般市民は萎縮することなくデモを行なうことができるだろうか。少なくともデモ参加者が減るなどの悪影響は避けられないだろう。  警察が実際に摘発を行わなかったとしても、新条例はこうした形で悪用することもできる
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その後取材は意外な方向へ
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