ポーランドリーグ6年の赤星貴文、日本の決勝T進出の肝は“デュエル”であると示唆

体格差を埋める方法はやはり“デュエル”

 ところで最近の赤星は、先発で出場してトップ下に入り、後半から中盤の底に入ってパスを供給することが多いようだ。筆者から見ると、赤星が中盤の底にいるほうが彼の長所である視野の広さを生かすことができチームの守備も安定するように見える。  何よりも、フィールドの選手たちが自分でボールを持った時にまず赤星を探しているのがわかる。つまりチーム内で赤星を起点にゲームを組み立てるという信頼を彼が集めている証拠である。 「ポーランドにいたときも、そういう起用が多かったですね。そんなときにマッチアップするポーランド人の選手は、体格がいいけれど足元の技術が……というのが多かったように思います。ただ、一回センターバックをやらされたことがあって、おいおいというのはありましたよ。だって、相手ストライカーは身長194とか普通にありますからね。そんなの、今タイのムアントンで活躍している空中戦に滅法強い青山直晃でも身長183とかでしょ? なかなか止められないですよ」  体格が大きい方が有利なのは当たり前である。では、赤星はそんな大男ばかりのポーランドでどう生き延びてきたのか。 「この身長(175㎝)ではどうやっても普通にやっていては勝てないわけですよ。だから、思い切って体当たりしていくことは多かったですね。たとえばタイでそうやって相手選手にぶつかっていくとすぐに吹っ飛んで行ってファウルを取られてしまいますが、ポーランドだとあちらのほうが大きいですからそういう展開にはならないわけですよ。その辺が、ハリルホジッチがよく口にしていた“デュエル”の部分ではないかと思います」  そんなポーランドで揉まれてきた赤星がタイに来て戸惑ったのはどんなことだったのか。 「練習場が静かなことですよね。ポーランドでも、ラトビアでも、ロシアでも、選手同士で怒鳴りあい喧嘩をするのが当たり前なのですよ。だから、タイにきたとき、“練習場が静かだな”ってそこが一番の衝撃でした。タイって人がみんな優しいですし、日本以上に平和ですよね」  筆者が驚いたのは、試合後に選手たちが乗り込むバスだった。スパンブリーのバスとバンコク・ユナイテッドのバスが仲良く並んでいるのだ。よく、「日本は試合後は対戦していた両チームのサポーターが同じバス・電車に乗れることが素晴らしい」というが、さすがに対戦相手同士のバスが二台並ぶ光景は見たことがない。
サポーターのバスが並んで停車

それぞれ別のチームのサポーターのバスが並んで停車する光景はきわめて珍しい

 こんなことは、ヨーロッパのライバル同士では絶対にありえない。考えてみると、タイの歴史上軍事クーデターは何度もおきているが、天安門事件のような深刻な流血の事態に発展したことはほとんどない。タイにおいて、サッカーとはまさに平和賛歌そのものである。  次回はこのように中欧と東欧とロシアを渡り歩いてきた赤星貴文だからこそ見える、タイサッカーの現状や選手の生活について伝えていきたい。 【タカ大丸】  ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館)は12万部を突破。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。  雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。公式サイト
 ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。
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