新潟県知事選で勝敗を分けた最後の有効打はあの応援議員のメンツだった!? 新潟県知事戦・戦略分析

 このネトウヨを利用する自民党の戦略に対抗するにはどうしたらいいのでしょうか。やはり野党側も「大々的な正義を掲げる」ということではないかと思います。時代にもよるのかもしれませんが、今は「正義を持っていること」が重視されています。  実際に成果を挙げているかどうかは関係ないようで、とにかく勇ましいことを言ってくれる人が求められているのです。このトレンドに乗るためには、野党側も強いキャッチフレーズを打ち出し、正義を語る必要があると思います。自民党はこれまで「美しい日本を取り戻す」や「日本を守る」などのキャッチフレーズで「強さ」や「期待感」をアピールしてきました。一方、野党側はどんなことをアピールしてきたのかを考えてみると、まったく思い出せませんし、ほとんどアピールできていないのではないかと思います。最近になって立憲民主党が「右からでも左からでもなく、上からのトップダウンの政治を下からの草の根の政治に変える」と言うようになりましたが、これもキャッチフレーズとしては、いまいち「強さ」を感じません。意外と野党側のキャッチコピーが効いていないという点を考え直さなければならないのかもしれません。

選挙プランナーは戦略的にネトウヨを利用している

 今回の新潟県知事選のような大きな選挙には「選挙プランナー」と呼ばれる職業の方が陣営に入って、選挙戦略を組み立てます。不思議なことに、選挙に勝たなければならないはずの野党側には「選挙プランナー」のような人が存在しないのですが、「選挙プランナー」はどうすれば選挙に勝てるのかを考え、アドバイスすることを仕事にしています。例えば、花角英世さんの娘さんを選挙に利用しているのも、演説で何度も「新潟の問題は原発だけではない」と語るのも、すべて「選挙プランナー」がアドバイスをしているからです。テレビで例えるなら、まさに「放送作家」のような役割をしているのが「選挙プランナー」なのですが、緻密に情勢調査の結果を参考にしながら、どこで何をするかを決め、票を積み重ねていくのです。  例えば、杉田水脈さんに応援に入ってもらい、感謝のツイートをするのも戦略です。今回の新潟県知事選では、池田千賀子陣営が5ポイント以上離されたところから猛追したわけですが、それを振り切るための手段が、ネトウヨ議員の集結でした。ジャーナリストの田中龍作さんが杉田水脈さんを直撃し、「(花角)陣営からの依頼」で新潟に来たという話を聞き出していましたが、杉田水脈さんは花角英世さんと特別なつながりがあったわけではないのに、わざわざ最終日に招かれて街頭演説をしているのです。もちろん、これは単なる偶然ではありません。  いつどこで誰に街頭演説をさせるのかというのは非常に重要な戦略であり、「ノーアイディアだったけど、偶然、杉田水脈さんが来ただけ」なんて無能なことはありません。敏腕な「選挙プランナー」がコーディネートしているのですから、当然、戦略に基づいて杉田水脈さんが招集されているのです。しかも、「呼んでおけばどうにかなるだろう」なんていう漠然とした戦略であるはずがなく、どれくらい票を上積みできるかという想定の計算があってのことで、杉田水脈さんにしろ、和田政宗さんにしろ、最終日に投入したら効果的であるという戦略ができているのです。つまり、日頃からネトウヨ議員のことを見て「アホや!」と思っている人は多いかもしれませんが、こうしたネトウヨ議員の影響力や拡散力は無視できたものではないと言えます。日頃からネトウヨを対策しておかなければ、このままどんどん増殖して取り返しのつかないことになってしまうという危機感を持つべきだと思います。

選挙ウォッチャーの分析&考察

 ネット右翼層の頭の中では「安倍政権は愛国」で、それ以外は「反日」という構図になっています。彼らの正義はシンプルに「日本を愛している」であり、何をしても「愛国無罪」になってしまいます。ネトウヨが自民党を支持している絶対的な正義が「愛国」なのだから、立憲民主党や共産党も「愛」を語ったらいいのだと思います。  安倍政権がお友達の経団連のために何でもやってしまうから、さまざまな日本のシステムが壊されたあげく、経済的に立ち直れない国になろうとしていることは火を見るより明らかですが、それでもなぜ野党が支持されないかと言えば、単純に「愛の表現がうまくないから」なのかもしれません。安倍政権さえ大きな愛で包み込んでしまう勢いで、「安倍晋三より日本のことが好きだし、安倍晋三より日本の経済を良くするためのアイディアに溢れているけど、それでも安倍政権を支持しますか?」というテンションで挑んでいきたいものです。 <取材・文・写真/選挙ウォッチャーちだい(Twitter ID:@chidaisan> ちだい●選挙ウォッチャーとして日本中の選挙を追いかけ、取材活動を行う。選挙ごとに「どんな選挙だったのか」を振り返るとともに、そこで得た選挙戦略のノウハウなどをTwitterやnote「チダイズム」を中心に公開中。立候補する方、当選させたい議員がいる方は、すべてのレポートが必見。
選挙ウォッチャーとして日本中の選挙を追いかけ、取材しています。選挙ごとに「どんな選挙だったのか」を振り返るとともに、そこで得た選挙戦略のノウハウなどを「チダイズム」にて公開中
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