写真/時事通信社
朝日新聞が、森友事件の第一報を報じたのは、昨年2月9日のことだった。
あれからもう1年4か月もの時が流れたということになる。
この間、さまざまなことがあった。いや、森友事件に関して言えば「ありすぎた」と言ったほうが適切かもしれない。不明朗な土地取引のスキーム、籠池夫妻の特異なキャラ、森友学園の経営する幼稚園で行われていた奇矯な教育内容、安倍昭恵の下劣ともいえる卑しさ、安倍晋三の愚かな周章狼狽ぶり、そして、今年に入ってからは、我が国の統治機構の根幹を揺るがす公文書改竄事件までが明るみに出た。ここまで驚天動地の出来事が明るみに出れば、一体何が問題なのか、わかりづらくなるのも当然だろう。もっといえばこれだけの出来事が起これば世間が森友事件に食傷気味になるのも自然の成り行きともいえるだろう。
こうした自然の趨勢を見越してか、安倍政権はいま、森友事件の幕引きを図ろうと躍起になっている。しかもその作戦は「このタイミングで大量に文書を公開すれば、誰も追いつけず、誰も真剣に読まず、かえって事実を覆い隠せるだろう」という姑息な意図に基づいたものだ。
過日、財務省が公開した「調査報告書」は、その好事例の一つだ。この報告書を虚心坦懐に読めば、「私や私の妻や事務所が関与していたら総理も議員も辞める」というあの不用意極まりない安倍総理の答弁が、公文書改竄の契機だったことが誰にでも理解できる(報告書P15)。なにせ当の自民党が設置した公文書改竄問題調査プロジェクトチームの座長を務める柴山明彦副幹事長が「国会における安倍晋三首相の答弁が少なくともきっかけになったことは紛れもない事実だろう」と一度は言明したほどだ。にもかかわらず、政府はいつものように「その指摘は当たらない」と、のらりくらりと逃げるばかり。これなど「どうせ世間はあの報告書をちゃんと読まない」と、たかをくくっているからに他ならない。