なぜ日本の経済学者は富豪や優れた投資家ではないのか?――元経済記者が、退職後に株投資を始めた理由
「輸入学問」だった日本の経済学
それぞれの国には、それぞれの経済活動、発展の仕方がある
経済学は社会科学です。同じ科学と言っても、物理学や化学、天文学などの自然科学とは違います。人々の消費行動、企業行動などをつぶさに観察して、さまざまな仮説や理論を導き出し、体系化したものが経済学です。人々の消費行動や企業行動には、それぞれの国の歴史や文化、宗教などが色濃く投影されています。従って、それぞれの国の経済活動、発展の仕方は一様ではなく、逆に驚くほど多様化しています。
欧州やロシア、日本、中国やインドなど、長い歴史・文化を持つ国と、資本主義の歴史しか持たないアメリカとでは、経済政策、経済発展の仕方は大きく異なります。誤解を恐れずにいえば、自然界の法則のように、世界どこでも通用する法則は経済の世界には存在しないということです。それぞれの国にはそれぞれの国の歴史や文化、宗教などの影響を受けた独特の経済発展の仕方、姿があるということになります。
このように考えると、経済学は純粋科学というよりも「実学」そのものではないかと思うようになりました。実学ならば、現実に役に立たなければ意味がありません。新聞社を退社したら、欧米の著名経済学者に倣(なら)って、それまでの経済記者として培(つちか)ってきた知識や企業分析を生かして、ひとつ私なりに株式投資に挑戦してみようと、密かに思うようになったのです。
【石橋叩きのネット投資術3】
<文/三橋規宏>
みつはしただひろ●1940年生まれ。1964年慶応義塾大学経済学部卒、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、科学技術部長、論説副主幹、千葉商科大学教授、同大学名誉教授、環境を考える経済人の会21事務局長等を歴任。主著は『新・日本経済入門』(日本経済新聞出版社)、『ゼミナール日本経済入門』(同)、『環境経済入門』(日経文庫)、『環境再生と日本経済』(岩波新書)、『サッチャリズム』(中央公論社)、『サステナビリティ経営』(講談社)など。経済ジャーナリスト。1964年、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、論説副主幹などを経て、千葉商科大学政策情報学部教授。2010年から名誉教授。専門は日本経済論、環境経済学。編著書に『新・日本経済入門』(編著、日本経済新聞出版社)、『環境が大学を元気にする』(海象社)など多数。『石橋をたたいて渡るネット株投資術』(海象社)を8月9日に上梓。
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