アメリカまで辿り着いた不法移民の子供1475人が行方不明。なぜそれでも彼らはアメリカを目指すのか?
しかし、昨年、メキシコ政府は中米からの不法移民の15万人を本国に送還しているのだ。この数字はトランプがひとり騒いでいる米国からの不法移民者の送還よりも遥かに多い数なのである。(参照:「El Pais」)
それでも彼らはアメリカを目指す。その理由は、自分たちの国には職はなく、しかも暴力、恐喝、強奪などで社会秩序が乱れているからだ。それならば、危険を犯してでも米国への移民を多くの者が望んでいるのである。
前出のバリリ神父はこう語る。
「(米国までの道のりは)危険性が高い冒険だが、それらを留まらせることはしない。それは、彼らの決断だからだ。彼らは社会秩序の乱れた国で危険に晒されていることをより感じている。そのような彼らに国に戻るようにとは言えない。だから途中の情報を提供してあげるのだ」
事実、この5年間で中米から米国への移民にチャレンジする者は6倍に増えている。(参照:「El Pais」)
もちろん、彼らの行為は不法だ。しかし、不法ではあるが米国への移民をチャレンジする者の10人の内の2人だけが米国への入国を達成するという。しかし、悲惨な例は子供が同伴者なしで米国に辿り着いた例だ。2017年からこれまで7635人の子供が身元引受人に預けられているが、そのうち1475人が行方不明になっているということが最近明らかにされて社会に衝撃を与えている。(参照:「HispanTV」)
なぜそこまでして彼らはアメリカを目指すのか。それは次の数字が物語っているだろう。
その数字とは、不法であれ合法であれグアテマラから米国に移民を果たした者が2016年に本国に送金した金額である。その額なんと、70億ドル(7560億円)。この“仕送り”によって、グアテマラの600万人が恩恵を受けたという。
不法移民の問題はアメリカ大陸の経済格差や中南米諸国の政情不安などさまざまな問題の象徴であり、トランプのように壁を設置して防ぐようなことでは決して解決しない根深い問題なのである。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
同伴者なしで辿り着く移民挑戦者の子の行く末
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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