薬剤師が教える、今さら聞けない『ビタミン』の話

◎ビタミンB5(パントテン酸)  エネルギー代謝に作用するCoAの構成成分。語源はギリシャ語で「どこにでもある酸」という意味。殆どの食事に含まれており、現代日本で不足することはまずありません。でも決していらないビタミンではないです。 ◎ビタミンB6(ピリドキシン、ピドキサール、ピリドキサミン)  アミノ酸の代謝や神経伝達に関わる重要なビタミンです。不足すると痙攣、てんかん発作、貧血を生じます。なおギンナン食中毒は、ギンナンに含有される物質がB6に似た物質のため拮抗して欠乏症を起こすからです。 ◎ビタミンB7(ビオチン)/別名ビタミンH(Haut)  ドイツ語で皮膚の意。  元々は皮膚炎を防止する因子として発見されたのが始まりです。コラーゲンやセラミドなどの生合成促進や抗炎症物質を生成することでアレルギー症状を緩和する作用があると言われています。通常は腸内の細菌が生成しており不足することはあまり無く、皮膚科の治療で用いられる事を除けばあまりお目には掛からないビタミンです。 ◎ビタミンB9(プロテイルグルタミン酸)/別名ビタミンM、葉酸  葉酸という呼び名の方が有名なビタミンです。DNAの合成に作用しており、欠乏すると赤血球障害や悪性貧血を引き起こします。細胞の分裂に必要なため、妊婦や授乳婦は1日あたり400ngの摂取が望ましいとされています。生野菜や果物、あとレバーなどから摂取できます。 ◎ビタミンB12(シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン)  DNAと脂肪酸の合成、エネルギーの産生に関与しているビタミンです。薬としても利用されており、眼精疲労とか末梢神経障害に使われます。1日の必要量は少ないので極度の菜食主義でもない限り欠乏することは多くありません。  様々な働きをするビタミンなので不足した場合は悪性貧血だけではなく、潜在的に深刻で不可逆的な障害を脳と神経にもたらしうる大切なビタミンです。 なお化学構造がかなり複雑で合成は困難を極めるため、現在は放線菌の培養液から生産されています。 ◎ビタミンC(アスコルビン酸)  コラーゲンなどのタンパク質の合成やミネラルの吸収など生体において様々な重要な働きをしているビタミンです。不足すると壊血症などを引き起こします。風邪にはビタミンCが良い! とよく言われていますが、あれは残念ながらデマです。  なお「レモン〇個分のビタミンC」というキャッチフレーズはレモン1つで20mg換算。食品添加物に酸化防止剤としても使用され、毎年全世界で11万トンが製造されています。  以上が水溶性ビタミンになります。  意外に種類が少ないですよね? サプリとかで摂取しすぎてもそこまで過剰な害があるわけではないですが、何事もやり過ぎというのはよくありません。可能なら健康的な食事から摂取したいものですね。  ちなみに歴史的にビタミンだと思われてたけど実は違ってましたw、みたいな物質もあり、それらのことを「ビタミン様物質」といいます。ビタミンNとかPとかVとかやたら存在するように感じるのはそのためです。  次回は脂溶性ビタミンやミネラルに関して解説させて頂きます。 一般人の知らない「クスリ」の事情 第2回 <文/長澤育弘> ながさわやすひろ●薬学部卒業後、救急指定病院在職中に認定薬剤師を取得。その後、調剤薬局やドラッグストア、在宅専門薬局で管理薬剤師を務める。2016年9月に「池袋セルフメディケーション薬局」(http://www.self-medication.co.jp/)を開局。「患者様が自分で健康を管理し自分で治療する」という促進を主な目的に掲げている。
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