「野党は不甲斐ない」という人は国会論戦を見ていない
この党首討論のやり取りをリアルタイムで確認していた著述家の菅野完氏はこう語る。
「ここ最近、国会論戦をみると、体調を崩すんです。あまりにも明らかなミス、ごまかし、不正に対する指摘でも、『誠実に対応していく』だけで弁明が済んだと押し通してしまう。『野党は不甲斐ない』という声をよく聞きますが、おそらくそういう人は国会論戦を見ていないのでしょう。予算委員会や本会議などNHKのカメラが入る時はまだマシ。テレビ中継のない財政金融委員会や厚生労働委員会での政府側答弁は、不誠実どころか『議論を拒否する』といったもの。ワイドショーや報道番組で紹介される断片的な映像ではなく、生の国会論戦は、それはもう実にひどいものです。昨日の党首討論は、安倍さんもだいぶいれこんでいたのか覇気はありました。しかし安倍さんにあるのは覇気だけ。野党各党首からの指摘への論理的反論など一切ない。あれじゃ、子供が駄々をこねているのと一緒です。森友問題や加計問題を真剣に調べている人なら、あの総理の姿を見て『議論は平行線』などとは表現しないはずです。『逃げ回る安倍晋三』としか表現のしようがないのですから」
しかし、菅野氏はそうして逃げ回る安倍首相のコメントの中に、見逃せない「失言」があったと指摘する。
「安倍さん、逃げ回るなかでもともと乏しい理性と知性を完全に失っていたのでしょう。ありえない大失言をやらかしています。それは『森友学園の問題の本質というのは、なぜあの値段で籠池氏側に引き渡されたのか、国有地がですね。引き渡されたのかということを、あるいはなぜ小学校として認可されるのかということ』と、『森友問題の本質』とやらを安倍晋三本人が解説してしまった点です。この発言を見ればわかるように、安倍晋三は『国有地売却に、疑義がある』と言ってしまっているのです。これは『確かに、虚偽答弁、文書改竄など事後の対応に問題はあったが、土地取引そのものは問題がない』とこれまで財務省が一貫して主張してきた内容を真っ向から否定するものです。『私や私の妻が関係していたら総理も議員もやめる』答弁に匹敵する、最低の答弁。安倍さんは大きな墓穴を掘ったといえるでしょう」
<文/HBO取材班>