こんな状況の中、既存のタクシー会社からは不満の声も出ている。
2017年の記事になるが、ガイドブックでも安心のタクシーとして紹介される「ビナサン」の幹部は、従来のタクシー会社と配車アプリ企業への税制面の違いを指摘し、不利を訴えている。(参照:「
SankeiBiz」)
確かに政府の歳入損失に繋がっているとも言えるが、実際にタクシーでひどい目に遭っている筆者からすれば、問題はもっと単純だと思ってしまう。サービスが悪い。ただそれだけだ。
在住日本人に実演してもらったアプリは「Goi Taxi」。検索しても出てこないので、ベトナムでもマイナーかもしれない
筆者はベトナムに関する単行本執筆のために何度もハノイやホーチミンを訪問し、そのたびしょうもないボッタクリを見てきた。左に行くべきところをわざわざ右に行く者。ワイパーのスイッチとメーターが連動しているらしく、ワイパーを動かすたびにわずかに料金が上がるケースもあった。到着時に正規料金と100円も差がないようなかわいいボッタクリではあるが、その無駄さ加減に苛立ちが募る。素早く移動して、そのかわりに「チップをくれ」と言われれば喜んで200円でも300円でもあげたっていい。そんな細かいストレスをいちいち感じるなら、グラブを使った方がずっといい。
そんな中で、ベトナム在住の日本人から、「おもしろいアプリもある」という話を教えてくれた。それはひとつのアプリですべてのタクシー会社や配車アプリに接続できるというアプリだった。ベトナム語ができなければ話にならないのだが、そのアプリで適当なタクシー会社をタップすると、自動的にコールセンターに接続され、タクシーが配車されるというものだ。タクシー会社がグラブに対抗したのだろうか。
早速、その日本人に実演してもらう。コールセンターにピックアップ場所と目的地を告げるとタクシー無線で配信され、近くにいるタクシーが挙手をして迎えに来ることになる。そして、オペレーターから何分後くらいに到着するかが告げられる。このときにタクシーのナンバーと運転手の電話番号も教えられた。これは便利かもしれない。
しかし、ここからがひどかった。タクシー運転手は客を取りたいために実際にいる場所とは違う、ピックアップポイントから近い場所を言っており、当初10分で到着するはずが、全然来ない。15分して電話をすると「あと5分」。これが何度も繰り返され、結局オペーレーターと電話を切ってから数十分経ってからの到着だった。
利用者が増えて供給が追いつかなくなっているグラブでも、このところこういったことが起こるようになっているが、ここまでひどい遅延はない。ベトナムのタクシー会社が衰退していく理由を垣間見た気がした。
<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:
@NatureNENEAM)>