退職後に始めた株投資で500万円大損した元新聞記者は、いかにして復活を遂げたのか

リスクの少ない株銘柄の選び方

 そのときに決めたコンセプトが、「定年後のボケ防止を兼ね、元金を減らさず、1割程度の投資益あるいは小遣い稼ぎを狙う方法」でした。そんな方法はないかと試行錯誤を繰り返しました。ネットを使う株取引の場合に証券会社に払う手数料は1999年に完全自由化になり、劇的に安くなりました。  それによって、売り買いを頻繁に行って小さな差益を積み上げる、「塵(ちり)を積み上げ山となす」投資方法が可能になりました。パソコンでのネット株取引が自宅で、手軽にかつ安価にできるようになったおかげで、「石橋たたきの投資術」が可能になったのです。  その方法を簡単に言うと、日経平均株価指数を構成する優良株(日経平均225)の中から配当率が高く、一定の値幅で変動する約20銘柄を選び出します。過去数年の株価の動きをチェックし、安値圏で購入し、高値圏で売却し売却益を得る方法です。  株価が5000円以下の銘柄を選び、売買に当たっては大量売買せず、最小単位の100株単位で売買します。ある銘柄の平均株価が5000円とすれば、100株購入すれば投入資金は50万円です。

株購入から売却までのタイミングは?

 次に、買値からいくら上がったら売却するかを決めます。私の場合、売却益が約1万円~1万5000円得られれば利益を確定(売却)するように決めています。5000円で購入した株価が5150円まで上昇すれば迷わず売却します。この場合、1万5000円の利益(手数料などは除く)が得られます。  購入から売却までの期間は数日の場合もあれば、1週間、1か月の場合もあります。一方、買いのタイミングは、5000円の株価が100~150円近く下がった場合がチャンスです。具体的には4900円~4850円です。このような方法で同じ銘柄を何度も売ったり買ったりしながら売却益を積み重ねます。他の銘柄についても同じように売買を繰り返します。  これは最初の大損失、そしてそれまで勉強期間として蓄財した投資資金があったからこそ可能になった方法です。  何事も費用対効果が大事です。小遣い稼ぎが目的ですから、多くの時間をかけて大量の経済データを集めて投資判断するなどということはしません。そこそこの金額を投資し、安全第一で大きな火傷(やけど)を避けて、細かく利益を確定するというやり方です。

6年間で1762万4073円の利益を獲得

6年の利益

6年間実践した投資方法での成果

 このやり方で6年間やってきましたが、元本を減らさず、投入資金の1割以上の利益(計1762万4073円)を上げることができました。 「1割では利益が小さすぎる」という方には、この方法はお役に立ちません。あくまで失敗を回避し、ローリスクで小遣い稼ぎに徹するというやり方です。この趣旨をご理解いただける方は、ぜひ「石橋攻略」を自分のものとしてください。特に私のような後期高齢者の方には、ボケ防止と小遣い稼ぎを兼ねたアンチエイジングになるので、ぜひチャレンジしてみてください。 ◆石橋叩きのネット株投資術第一回 <文/三橋規宏> みつはしただひろ●1940年生まれ。1964年慶応義塾大学経済学部卒、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、科学技術部長、論説副主幹、千葉商科大学教授、同大学名誉教授、環境を考える経済人の会21事務局長等を歴任。主著は『新・日本経済入門』(日本経済新聞出版社)『ゼミナール日本経済入門』(同)『環境経済入門』(日経文庫)『環境再生と日本経済』(岩波新書)『サッチャリズム』(中央公論社)『サステナビリティ経営』(講談社)など。
経済ジャーナリスト。1964年、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、論説副主幹などを経て、千葉商科大学政策情報学部教授。2010年から名誉教授。専門は日本経済論、環境経済学。編著書に『新・日本経済入門』(編著、日本経済新聞出版社)『環境が大学を元気にする』(海象社)など多数。『石橋をたたいて渡るネット株投資術』(海象社)を8月9日に上梓。
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